皮脂の過剰分泌を抑える方法とは?治療方法を紹介
「いつも肌が脂っぽくてベタベタしてる」「メイクも崩れやすいしニキビもできやすいオイリー肌を何とかしたい……」皮脂が過剰に分泌されるオイリー肌(脂性肌)には、10代の頃から悩まされている方も多いのではないでしょうか。
皮脂が過剰に分泌される原因や正しいケアを知らないと、肌のバリア機能が壊れて逆に皮脂が過剰に出てしまう可能性もあります。
実は皮脂の過剰分泌は、医療機関で薬を用いた治療も可能です。食事や紫外線対策といったセルフケアも重要ですが、治療により数ヶ月で皮脂のベタつきの改善が期待できます。
この記事では、皮脂の過剰分泌を抑えるためにできるセルフケアだけでなく、医療機関での治療方法について解説しています。治療で使用するイソトレチノインの注意点についても解説しているため、オイリー肌でニキビやテカリといった肌トラブルにお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。
皮脂の過剰分泌の原因
皮脂は毛穴の中にある皮脂腺*から分泌されます。中でも額や鼻(いわゆるTゾーン)は皮脂腺の数が多く、顔の中でもテカリが目立ちやすい部位です。
ここでは、なぜ皮脂が過剰分泌されるのか、その原因について解説します。
皮脂腺*:肌の真皮層に存在する、皮脂を分泌する器官。皮脂腺が発達している部位(額や鼻、頭皮など)は皮脂が多くなる。
ホルモンによる影響
皮脂の分泌量は男性ホルモンの影響が大きく、年齢や性別で変化します。産まれてすぐは高値を示すものの、その後思春期までに低下します。思春期以降に分泌量は増加し、最も多くなる時期は、20代です。
中年以降の男性のホルモン値は、高値を維持する場合が多いです。女性は閉経後に減少しますが、30代後半には副腎*由来の男性ホルモン増加によって一時的に皮脂量が上がることもあります。[1]
年齢や性差によるホルモンバランスの変動が、皮脂分泌量の差を生み出します。
副腎*:さまざまなホルモンを分泌する臓器
日内変動や食事による影響
皮脂の分泌量は一定ではなく、1日の中でも変動があります。実は日中だけでなく、睡眠中の皮脂分泌量が多いと言われています。
また、私たち自身の生活にも大きく影響します。
- 食事
- 活動量
- 体調
その日の食べたものや活動内容などによって、皮脂の分泌量は変動していると言えるでしょう。[2]
気温や紫外線による影響
季節や天候によっても皮脂量は変動します。夏場は気温や湿度が上がるため、汗と皮脂でベタつきを感じやすいでしょう。ただし個人差も大きく、一概には言えません。
また、紫外線を浴びて肌のバリア機能が乱れると、過剰な皮脂分泌を引き起こす可能性があります。皮脂の過剰分泌を防ぐためには、季節に合わせた紫外線対策も重要です。[2][3]
皮脂の過剰分泌を抑える方法
皮脂が過剰に分泌された状態が続くと肌のベタつきが気になりますよね。
- セルフケアでの対処法
- 薬を使用した治療方法
過剰な皮脂を抑える方法について、それぞれ詳しく解説します。
セルフケアでの対処法
健康な肌は、皮膚内の水分保持機能と皮脂のバリア機能が働いています。[4]
セルフケアで重要なのは以下のとおりです。
- 1日2回の洗顔
- 栄養バランスのとれた食事
- 紫外線対策
洗顔に関しては、ベタベタが気になるからといって洗いすぎないように注意が必要です。過剰な洗顔はバリア機能を低下させ、かえって肌荒れを招く恐れがあります。
食事にはビタミンB2・B6を含む食材を積極的に取り入れましょう。皮脂の分泌を抑えると言われています。[5]
また、紫外線の刺激が続くと肌がダメージを受け、過剰な皮脂分泌につながることがあります。日焼け止めや日傘などで日頃から紫外線対策を行いましょう。
薬を使用した治療方法
皮脂の過剰分泌を抑えるためには、薬を使った治療方法もあります。セルフケアを行ってもベタベタが治まらないときは、検討してみるとよいでしょう。
医療機関で処方できる薬は、塗り薬(トレチノイン)と飲み薬(イソトレチノイン)の2種類です。
市販の化粧品や医薬部外品にはレチノールが配合されていますが、塗り薬のトレチノインは医療機関でのみ処方される医薬品です。トレチノインはビタミンA誘導体に分類され、化粧品に含まれるレチノールの約100倍の強さがあると言われています。[6][7]
また、飲み薬であるイソトレチノインには皮脂分泌を抑制する作用があり、全身的な効果が期待できます。海外では重症のニキビ治療などに用いられていますが、日本では未承認です。[8]
次の章では、イソトレチノインを用いた治療について詳しく説明します。
皮脂分泌を抑えるイソトレチノインとは
イソトレチノインは皮脂腺細胞にアポトーシス(細胞の自死)を誘導し、皮脂腺そのものを縮小させます。それにより、イソトレチノインの服用によって皮脂の分泌量を大幅に減らすことが可能です。
一方、ニキビは過剰に分泌された皮脂が毛穴を詰まらせ、アクネ菌が繁殖して炎症が起こることで発生します。イソトレチノインによって過剰な皮脂が抑えられると、アクネ菌の増殖しにくくなるため、海外では重症ニキビの治療に用いられています。
イソトレチノインの皮脂分泌抑制作用は、ニキビ発生の根本原因である過剰な皮脂をコントロールする点が大きな特長と言えるでしょう。[8][9]
イソトレチノイン治療のメリット
イソトレチノインは医療機関で処方される医薬品のため、市販の化粧品に含まれるレチノールよりも高い効果が期待できます。イソトレチノイン治療のメリットは、皮脂が分泌される皮脂腺の縮小作用が認められている医薬品を使用できる点です。局所的な作用を持つ塗り薬とは違い、全身性の作用により過剰な皮脂分泌をコントロールできます。
塗り薬や市販のスキンケアなどを試しても、なかなか改善が感じられなかった方にとって、イソトレチノイン治療は新たな選択肢となるでしょう。
ただし、服用には副作用や制限もあります。必ず医療機関にて医師の診察を受けてから治療を始めましょう。
イソトレチノイン治療の流れと費用について
イソトレチノインは医療機関でのみ処方が可能です。当院でのイソトレチノイン治療の流れと費用について説明します。
当院での治療の流れ
イソトレチノインは海外でニキビ治療薬として承認されていますが、日本では未承認の薬です。まれに重篤な副作用が報告されており、他の薬との飲み合わせにも注意が必要です。治療のリスクを十分ご理解いただいた上でイソトレチノイン治療を開始します。
イソトレチノインは全身に作用するため、服用期間中は日常生活での注意点や副作用のサインをしっかり把握しておくことが重要です。当院では、服用開始前と開始1ヶ月後に血液検査を行い、副作用の有無を確認しています。血液検査の結果によっては、医師の判断で治療を中止する場合もあります。
副作用と思われる症状が出て不安な場合は、すぐ医師にご相談ください。経過を確認しながら服用量の調整を行いますが、イソトレチノインによる副作用が考えられる場合は、治療を中断することもあります。
当院では、このように慎重にイソトレチノイン治療を行っております。服用量や継続の判断が難しいため、個人輸入での服用は推奨しておりません。
リスクや副作用についてさらに詳しく知りたい方は、別記事「イソトレチノインの個人輸入(通販)は怖い?どこで買えるの? 」をお読みください。
以下はおおしま皮膚科でのイソトレチノインを使用した治療の詳細と流れです。
期間 | 1クール:約6ヶ月(個人によって異なる) |
飲み方 | 1日1〜2回(毎日)必ず食後に飲むこと |
1日の服用量 | 10〜20mg(個人によって異なる) |
採血 | 服用開始前、開始1ヶ月後に実施し、副作用の有無を調べる |
注意点 | 飲み忘れた場合でも一度に2回分飲まない |
治療の流れ | 医師による診察事前の血液検査検査結果に問題なければ服用開始 服用開始1ヶ月後に血液検査副作用の有無など経過の確認症状の改善がみられたら終了 |
上記は一例です。
症状がよくなれば、早めに治療が終了する場合もあります。服用量や服用期間には個人差があります。
詳しくは診察時に医師にご確認ください。
費用
イソトレチノインの費用と服用回数は以下のとおりです。保険適用のない自由診療となります。通常1日1〜2回の服用ですが、適切な用量や飲む回数は人によって異なります。
アクネトレント
10mg(30錠・30日分) | 7,500円(税込8,250円) |
20mg(30錠・30日分 | 12,000円(税込13,200円) |
イソトレチノインの副作用
イソトレチノインには、めったにみられない重篤な副作用もあれば、比較的よくみられる副作用もあります。どちらの症状も治療をする上では事前に知っておくことが大切です。ここでは、イソトレチノインの副作用について解説します。
重篤な副作用
イソトレチノインの主な副作用とリスクは以下の表の通りです。
妊婦への影響 | 胎児の奇形、流産、死産、早産 |
精神症状 | うつ、幻覚、幻聴、自傷行為、自殺企図など |
消化器症状 | 急性膵炎 |
皮膚症状 | スティーブンスジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症 |
男女ともに、イソトレチノインの服用前後1ヶ月は避妊が必要です。胎児の奇形や流産の報告があるためです。また、献血や授乳も禁止されています。[9][10]
よくみられる副作用
イソトレチノインを服用すると、唇の乾燥や口唇炎が起こりやすいと言われています。服用量が多くなるほど起こりやすい傾向にあります。
ほかによくみられる副作用症状は、鼻の乾燥や日光過敏症です。日常的に保湿剤を使ったり日傘や日焼け止めで紫外線を避けたりするなど、紫外線対策をしっかり行いましょう。
また、肝機能障害や脂質異常(高脂血症)などの重い副作用が起こる可能性も報告されています。当院では服用後1ヶ月を目安に採血を行い、結果によっては処方を中止する場合もあります。自己判断での継続は避けてください。
さらに詳しい副作用や注意点は、下記のリンク先でご確認いただけます。
イソトレチノインは怖い?副作用や注意点について
イソトレチノイン治療に関するよくある質問
イソトレチノイン治療に関するよくある質問にお答えします。
Q. 皮脂が出ないようにするにはどうしたらいいですか?
A. セルフケアとしてできることは以下のとおりです。
- 1日2回の洗顔:過剰な皮脂を取り除く
- 栄養バランスのとれた食事を摂取:とくにビタミンB2・B6は皮脂の分泌を抑える
- 紫外線対策:紫外線刺激は過剰な皮脂分泌につながることがある
セルフケアを試してもベタつきが気になるときは医療機関にて治療を行う方法もあります。通常、塗り薬(トレチノイン)や飲み薬(イソトレチノイン)を使用します。
Q. オイリー肌はどうやって治せますか?
A. オイリー肌は皮脂が過剰に分泌されている状態です。
皮脂腺の縮小作用により皮脂分泌がコントロールできるイソトレチノインでの治療を行うと、オイリー肌の改善が期待できます。
Q. 保湿しても皮脂が出るのはなぜ?
A. 健康な肌は、皮膚内の水分を保つ機能と皮脂によるバリア機能が働いています。
しかし紫外線などによって肌のバリア機能が壊れると、保湿しても皮脂が過剰に分泌されてしまいます。
オイリー肌でお悩みなら渋谷駅前おおしま皮膚科へ相談を
皮脂が過剰に分泌される原因には、ホルモンの影響だけでなく食事や自身の活動量、気温、紫外線なども影響します。また1日のうちでも分泌量には変動があり、寝ている間は多く分泌されると言われています。
自分でできるケアは、洗顔やビタミンB2・B6を取り入れた食事、紫外線対策です。過剰な洗顔は逆に皮脂を取り過ぎて肌のバリア機能が低下してしまうため注意しましょう。セルフケアを頑張ってもなかなかベタつきが改善されない場合は、医療機関での治療を検討しても良いでしょう。
とくに飲み薬のイソトレチノインでは皮脂が分泌されるもとの皮脂腺を縮小し、そもそもの皮脂の分泌量を抑えます。
ケアを頑張ってもひどいオイリー肌がなかなか良くならない、ニキビやテカリに長年悩まされている……そんな方はぜひ渋谷おおしま皮膚科へお気軽にご相談ください。
<アクネトレントについて>
未承認医薬品等 | 日本国内では未承認医薬品に該当 |
入手経路等 | 当院医師の判断のもとPRSS社より購入しています。 |
国内の承認医薬品等の有無 | なし |
諸外国における安全性等に係る情報 | 服用期間中とその前後1か月間に性行為をする場合は、必ず避妊を行ってください。服用期間中とその後1か月間は妊娠、授乳、献血をしないでください。※妊娠女性への輸血により、胎児にイソトレチノインの影響が生じるおそれがあります。イソトレチノインを、他の人と共用しないでください。 |
参考
[1]メークアップ化粧料における皮脂コントールの重要性とその対策
[2]皮脂分泌の動態に関する研究(そ の1) 坂 木 佳 寿 美*
[3]日本人男性の加齢に伴う顔面皮膚の生理的・形態的変化と自己意識について(第1報) -皮膚基本特性の部位差 ・季節間変動 ・加齢変化 につ いて-*
[6]レチノイン酸治療-最近の進歩- 参考文献_美容医学への扉
[8]13-cis Retinoic acid induces apoptosis and cell cycle arrest in human SEB-1 sebocytes – PubMed