メトホルミンのダイエット効果とは?痩せる理由やGLP-1との違いを解説
「ダイエット薬のメトホルミンにはどんな効果がある?」「よく聞くGLP-1とどう違うの?」メトホルミンの名前を聞いたことはあっても、メトホルミンの効果をよく知らず、ダイエット薬としての使用に不安になる方もいるのではないでしょうか。
メトホルミンは2型糖尿病の治療薬であり、近年ではさまざまなダイエット効果を持つことがわかっています。
この記事ではメトホルミンのダイエット効果だけでなく、メカニズムやGLP-1との違いについて解説しています。記事を読むことで、メトホルミンダイエットで痩せる理由がわかるため、ダイエットに対する不安も抑えられるでしょう。
メトホルミンダイエットが気になっている方は、ぜひ最後までお読みくださいね。
メトホルミンでのダイエット効果とは?
メトホルミンは糖尿病の治療薬ですが、ダイエット効果が期待されるようになってきました。ここでは、メトホルミンの基本的な内容とダイエット効果について詳しく説明します。
メトホルミンとは
メトホルミン自体は、数十年以上前から2型糖尿病治療に使用されている歴史の長い薬です。
日本ではダイエット(肥満症)に未承認ですが、体重減少効果があると言われており、近年ではダイエット目的で使用される機会も増えてきました。[1]
メトホルミンにおけるダイエット効果
メトホルミンには体重を減少させる効果や脂肪をため込みにくいなどのダイエット効果が期待できます。ある研究では、ウエスト周径が減ったとの報告もあります。
そもそも体内で糖が余ると、余分な糖は脂肪としてため込まれるようになっています。メトホルミンを服用することで糖をため込まないようにし、結果的に脂肪をため込みにくい体になるでしょう。[2]
メトホルミンで痩せる理由
痩せる主な理由は以下の5つです。
- 筋肉での糖利用を促す
- 小腸で糖の吸収を抑制する
- 脂肪酸の分解を促す
- 便中に余分な糖を排出する
- 食欲を抑える・満腹感が持続する
それぞれ詳しく解説します。
筋肉での糖利用を促す
メトホルミンは糖利用を促し、筋肉でエネルギーとして消費しやすくする働きがあります。これは、メトホルミンによってAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)と呼ばれる酵素が活性化されるためです。
通常体内では糖が余っていると脂肪としてため込まれます。しかし、メトホルミンを服用することで筋肉でエネルギーを消費し、糖を脂肪としてため込みにくくなります。[3][4]
小腸で糖の吸収を抑制する
メトホルミンは小腸での糖の吸収を抑制する効果が期待できます。小腸からの糖吸収を防ぐことで、体内に脂肪がため込まれないようになるためです。[3]
肝臓での脂肪酸分解を促す・合成を抑える
メトホルミンは肝臓においてAMPKを活性化すると脂肪酸の分解を促すだけでなく、脂肪酸の合成を抑制する作用もあります。
これにより、中性脂肪の原因となる脂肪酸がエネルギーとして使用されやすくなります。[4]
便中に余分な糖を排出する
メトホルミンは便中に体内で余っている糖を排出する作用を持つことがわかっています。体内に糖をため込みすぎないことは、結果的に脂肪をため込みにくくなります。[5]
食欲を抑える・満腹感が持続する
メトホルミンは、GLP-1製剤と同様に食欲抑制作用を持つことがわかっています。
糖尿病治療薬の中でもメトホルミンはGLP-1とはまったく違うメカニズムを持つ薬です。しかし、メトホルミンはGLP-1の分泌を促す作用を持ち、GLP-1の分泌によって視床下部へ刺激が伝わり食欲抑制効果を発揮します。
食欲抑制だけでなく、GLP-1分泌を促すことによる満腹感の持続作用もあると言われています。メトホルミンを服用すると、小腸のぜん動運動が抑えられ、食べものはゆっくり消化されるためです。[6]
メトホルミンにもGLP-1製剤と同じように食欲抑制や満腹感の持続によってダイエット効果があると言えるでしょう。
ダイエット効果はいつから出る?
ダイエット効果には個人差がありますが、1年で体重が約1.3〜3kg減少したという結果が出ています。
メトホルミンでのダイエットでは、体重減少は比較的ゆるやかなことが多いです。無理なくダイエットができると言えるでしょう。[7][8][13]
メトホルミンとGLP-1製剤の違い
メトホルミンとGLP-1製剤はどちらもダイエットに使われる薬です。ダイエット効果や使い方まで、以下のようにさまざまな違いがあります。
- ダイエット効果(体重減少)の違い
- ダイエット効果が出るまでの期間の違い
- 作業機序の違い
- 使い方の違い
それぞれ詳しく解説します。
ダイエット効果(体重減少)の違い
GLP-1製剤はメトホルミン単独で使用するより、体重減少効果が高いと言われています。[9]
GLP-1では半年で約3kgの体重減少の報告や、肥満症の方に対してセマグルチド(商品名:リベルサス、オゼンピック)を使用したところ、15ヶ月で約15kgの体重減少がみられたという報告があります。[10][11]
メトホルミンではさまざまな研究結果がありますが、1年間で約1.3〜3kg減少したとの報告がみられます。メトホルミンにおいては、ゆるやかに体重が減っていく薬だと言えるでしょう。[8]
ダイエット効果が出るまでの期間の違い
メトホルミンはGLP-1と比較して、ダイエット効果が出るまでの期間が長いと言われています。個人差はありますが、GLP-1は一般的に体重減少を感じられるまでが早いです。
さまざまな結果が出ており個人差も大きいですが、GLP-1では約3ヶ月から半年で体重減少が実感ができるようです。[12]
メトホルミンでの研究は半年から1年での報告が多く、GLP-1に比べると比較的ゆっくり体重が落ちていくと言えるでしょう。[7][8]
作用機序の違い
メトホルミンとGLP-1製剤は作用機序(メカニズム)が大きく違います。
インスリン分泌を促すインクレチン(GLP-1などの消化管ホルモンの総称)と同じように働く薬がリベルサスやオゼンピックなどのGLP-1製剤です。
GLP-1でのダイエットに関する主な作用は、食欲を抑えたり満腹感を維持したりする作用です。
メトホルミンはさまざまな作用機序を持ちますが、余分な糖を体内に吸収せず、脂肪をため込まないようにする働きがメインです。加えてGLP-1分泌作用もあると言われています。
使い方の違い
メトホルミンとGLP-1では、形状が違うため、使い方(飲み方)も大きく違います。
メトホルミン | GLP-1製剤 | |
形状 | 飲み薬 | 注射製剤/飲み薬(リベルサスのみ) |
服用/使用回数 | 毎日1日2回(人により違う) | 毎日/週1回 1日1回 |
リベルサスを除くGLP-1製剤はすべて自己注射が必要な製剤で、使い方も製剤によってさまざまです。毎日注射しなければいけないものもあれば、週に1回の注射で良いものもあります。注射製剤であるため、自分で針の取り付けが必要であったり冷所での保管が必要であったりします。
メトホルミンの副作用や使用時の注意事項
メトホルミンに限らず、どの薬でも副作用には注意が必要です。この章ではメトホルミンの副作用やリスク、処方できない方についても解説します。
メトホルミンの副作用・リスク
薬を用いたダイエットを行うときは、副作用のリスクについて知っておくことが大切です。メトホルミンで特に注意したい副作用は以下のとおりです。
副作用の種類 | 主な症状 |
乳酸アシドーシス | 吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、体がだるい、筋肉痛、呼吸が苦しい |
低血糖 | 震え、顔面蒼白、強い空腹感 |
肝機能障害 | 疲れやすい、だるい、食欲不振など |
横紋筋融解症 | 手足のこわばり、手足のしびれ、脱力感、筋肉の痛み、尿が赤褐色になる |
メトホルミンでよくみられるのは、下痢や悪心など消化器に関する副作用です。ひどくなければ様子をみて続ける場合が多いですが、急に悪化したり日常生活に支障が出たりする場合は早めに受診しましょう。
糖尿病治療の薬の中でも低血糖は起こりにくい薬ですが、リスクがゼロではありません。他には、肝機能障害など血液検査でわかる副作用もあります。
メトホルミンを服用する際は、副作用が出ていないか確認するためにも定期的に医療機関を受診して検査を受けることが大切です。[13]
メトホルミンを処方できない方・注意事項
メトホルミンを処方できない方は以下のとおりです。
処方できない方
- 妊娠中、授乳中の方
- 他に糖尿病の薬や利尿薬を服用している方
- 経口摂取が困難な方、寝たきりの方など全身状態が悪い方
- 乳酸アシドーシスの既往歴がある方
- 16歳未満や75歳以上の方
- 大量の飲酒をする方
- 手術前後の方
- 脱水症状がある方
- 肝臓・腎臓(推算系球体ろ過量(eGFR)が30mL/分1.73m2未満)・心臓・肺機能障害のある方
- インスリンの絶対的適応がある方
- 栄養不良の方
- 下垂体・副腎機能不全の方
上記に該当する場合は副作用をおこす可能性があるため、メトホルミンを処方できません。他に食事が不規則、または十分に摂れていない方や激しい運動をしている、感染症にかかっている方も事前に相談するようにしましょう。
飲み始めたあとでは、脱水状態に注意が必要です。脱水状態での症状は以下のとおりです。
- 喉が渇く
- 体重が減る
- 立ちくらみ、めまい
- 疲れやすい
- 体に力が入らない
- 手足がつるなど
上記の症状があらわれた場合はいったん使用を中止し、必ず医師に相談してください。
他には、造影剤を使用した検査前も使用できない場合があるので注意しましょう。ヨード造影剤の検査48時間前からメトホルミンを服用してはいけません。乳酸アシドーシスと呼ばれる副作用が起こりやすくなるためです。数日中止する必要があるため、必ず事前に相談しておきましょう。[13]
メトホルミンのダイエット効果に関するよくある質問
ここではメトホルミンのダイエット効果に関するよくある質問についてお答えします。
メトホルミンで何キロ痩せた?
メトホルミンを使用したある研究では、1年間で約1.3kg体重が減少したとの結果が報告されています。別の研究結果では1年間で体重約1.7〜3kgの減少でした。
ダイエットに効果がありますか?
メトホルミンには体重を減少させたり脂肪をため込みにくくするダイエット効果が期待できます。ウエスト周径が減ったとの報告がある薬です。
どれくらいで効果がでますか?
さまざまな研究報告がありますが、約1年でメトホルミンを使用していない場合より明らかに体重が減ったとの報告があります。一定の期間続けることで効果がしっかり実感できる薬です。
一緒に飲んではいけない薬は?
他のダイエット薬との組み合わせによっては一緒に飲んではいけない薬があります。糖尿病治療薬や利尿薬も一緒に飲めません。他に薬を飲んでいる場合は、必ず事前に相談してくださいね。
メトホルミンでのダイエットが気になる方は渋谷駅前おおしま皮膚科へ相談を
メトホルミンは2型糖尿病の薬の中でも、歴史の長い薬です。ダイエット薬としても、体重を減少させる効果だけでなく脂肪をため込みにくい、ウエスト周径を減らすなど効果が期待できます。
脱水には注意が必要ですが、低血糖なども比較的起こりにくい薬です。効果は比較的ゆっくりですが無理なくダイエットを続けたい方に向いているでしょう。
メトホルミンを試してみたいけど実際の効果がわからず不安な方や、GLP-1など他のダイエット薬との違いを知って検討したい方は、ぜひ一度渋谷駅前おおしま皮膚科へお気軽にご相談ください。
参考
[1]Effects of metformin in obesity treatment in different populations: a meta-analysis – PMC
[2]Long-term safety, tolerability, and weight loss associated with metformin in the Diabetes Prevention Program Outcomes Study
[3]メトホルミン/医薬品インタビューフォーム
[4]Effect of metformin on the urinary metabolites of diet-induced-obese mice studied by ultra performance liquid chromatography coupled to time-of-flight mass spectrometry (UPLC-TOF/MS)
[5]Enhanced Release of Glucose Into the Intraluminal Space of the Intestine Associated With Metformin Treatment as Revealed by [18F]Fluorodeoxyglucose PET-MRI
[6]日本内科学会雑誌 第102巻 糖尿病と関連する内科疾患:診断と治療の進歩>肥満症
[7]2 型糖尿病治療におけるメトホルミンの 使用実態に関する観察研究(MORE study)
[8]Long-term treatment study of global standard dose metformin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus
[9]The Antiobesity Effect of GLP‐1 Receptor Agonists Alone or in Combination with Metformin in Overweight /Obese Women with Polycystic Ovary Syndrome: A Systematic Review and Meta‐Analysis – Lyu – 2021 – International Journal of Endocrinology – Wiley Online Library
[10]3.GLP-1 受容体作動薬の体重減少効果
[11]過体重または肥満の成人に対するセマグルチドの週 1 回投与 | 日本語アブストラクト
[12]Weight loss effect of glucagon-like peptide-1 mimetics on obese/overweight adults without diabetes: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials
[13]日本薬局方 メトホルミン塩酸塩錠/添付文書
メトホルミンについて
未承認医薬品等(異なる目的での使用) | メトホルミンは医薬品医療機器等法において、2型糖尿病の効能・効果で承認されています。 しかし当院で行っている肥満治療目的の使用については国内で承認されていません。 |
入手経路等 | 国内の医薬品卸業者より仕入れています。 |
国内の承認医薬品の有無 | メトホルミンを一般名とする医薬品は国内では2型糖尿病の効能・効果で承認されておりますが、承認されている効能・効果及び用法・用量と当院での使用目的・方法は異なります。 |
諸外国における安全性などに係る情報 | なし |