皮膚科用語 - 渋谷駅前おおしま皮膚科

皮膚科用語

●アシクロビル acyclovir
核酸塩基のグアニンのアナログ。
感染細胞内に取り込まれると、ウイルス性チミジンキナーゼにより活性化し、ウイルスDNAポリメラーゼの阻害物質として、またはdGTPと競合してウイルスDNA合成を特異的に阻害する。
血中濃度があがるとアシクロビル脳症をおこすことがある。

●アスピリン不耐症 aspirin intolerance
アスピリンなどの酸性非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)により蕁麻疹、喘息、鼻炎、アナフィラキシーショックなどのⅠ型アレルギー類似の症状が生じる疾患。
非アレルギー性疾患で、NSAIDsの有するシクロオキシゲナーゼ阻害作用により、プロスタグランジン生成が抑制され、ロイコトリエン酸性が増加した結果発症すると推測される。
慢性蕁麻疹の20%程度を占めるとの報告がある。

●アポトーシス apoptosis
細胞死の過程が形態的には細胞膜が変性し、ネクローシスに比べて大きい水泡状の原形質突出が起こる。
細胞全体が圧縮された形に変形し、核が破壊され断片化する。やがて細胞全体が断片化し、各断片を含む油滴状のapoptotic bodyとなる。
この小粒は生体内においては食細胞にとらえられ消化されるため、細胞から放出されるものはなく、炎症等はおこらない。
アポトーシスの誘因は種々あるが、これまでアポトーシスを引き起こすと考えられていたほぼすべての刺激がキャスパーゼを活性化させ細胞を死滅させることが示された。

●アミオパティック皮膚筋炎 amyopathic dermatomyositis
特徴的な皮疹を有するが、通常2年以上、筋症状を欠く皮膚筋炎。
欧米ではステロイド全身投与なしでコントロール可能な例さえあり予後良好が多いが、本邦ではCK低値、抗Jo-1抗体陰性で、急性進行性間質性肺炎を生じる極めて予後不良な一群が存在することが認識されている。

●アンチセンス antisense
メッセンジャーRNA(mRNA)転写物に相補的な一本鎖。
DNAまたはRNAそれ自身が翻訳されるプラス鎖RNAと相補的であるため、アンチセンスのRNAまたはDNAはプラス鎖RNAと配列特異的に結合(ハイブリダイズ)する。
アンチセンスは、特異的遺伝子発現を抑制する方法として用いられる。

●アンテドラッグ antedrug
標的部位で目的とする薬理作用を発現した後、速やかに代謝され全身に対してはほとんど副作用を発現しないことを目的として開発された薬物。
外用局所では化学的修飾により増強された薬理作用を発揮し、体内に吸収されると活性がなくなるか、あるいは活性の低いものに代謝される。
酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(パンデル)は経皮投与後局所で強い抗炎症作用を発現するが、吸収され全身循環系に移行した後は血中のエステラーゼにより、作用の弱いヒドロコルチゾン(強力ポステリザン等)に代謝される。

●亜急性皮膚エリテマトーデス subacute cutaneous lupus erythematosus(SCLE)
LEの特異疹を慢性型、亜急性型、急性型にわけた場合の亜急性型。
この皮疹を有するLE患者は全身症状が軽度。抗SS-A抗体陽性、HLA-DR3陽性が多いことから、LEの1つのサブセットとしても認識。
皮疹は環状連圏型と丘疹鱗屑型に分けられる。Sjogren症候群に伴う環状紅斑との異動が検討されている。

●イオントフォレーシス iontophoresis
イオン化した薬剤を直流電流で経皮的に浸透させる。保険適応は尋常性白斑、掌蹠多汗症。
掌蹠多汗症では流水が用いられる。

●イディオタイプ idiotype
B細胞クローンが産生する免疫グロブリンに発現するクローン特異的抗原性を総称してイディオタイプという。
免疫グロブリン分子の可変領域、特にVH鎖、VL鎖の組み合わせにより決定される。
抗原性を有し、イディオタイプに対する抗体が産生される。これを抗イディオタイプ抗体と呼ぶ。
さらにこれに対する抗体も産生され、抗・抗イディオタイプ抗体と称される。皮膚ではメラノーマに対するイディオタイプ抗体療法がある。

●インターロイキン interleukin
細胞同士が情報伝達を行うためにだす物質をサイトカイン。
この中で白血球が産生するサイトカインをインターロイキンと呼ぶ。
IL-1 急性期炎症反応のメディエーター、T細胞の活性化因子
IL-2 T細胞増殖因子
IL-3 造血細胞の分化、増殖促進、肥満細胞の増殖促進
IL-4 B細胞によるIgE産生促進
IL-5 好酸球の増殖・活性化
IL-6 急性期炎症反応のメディエーター B細胞や形質細胞の増殖因子
IL-7 胸腺細胞やT細胞の増殖因子
IL-8 好中球の活性化・遊走因子
IL-10 抗原提示細胞の機能抑制、インターフェロンγの産生抑制
IL-13 B細胞によるIgE産生促進作用

表皮細胞はIL1、IL6、IL7、IL8、IL10などを産生する。

●インテグリン integrin
代表的な細胞接着因子の1つ。細胞表面にある膜貫通蛋白質でα鎖とβ鎖からなる非共有結合のヘテロダイマーで、フィブロネクチン、ラミニン、あるいはコラーゲンといった細胞外マトリックスに対する受容体として機能する。
細胞がインテグリンを介して基質と接着すると、いわゆる強固な接着であるfocalcontact(FC)を形成し、その際インテグリン自体の活性化とFCに局在するチロシンキナーゼの活性化が誘導され、細胞内シグナル伝達機構が活性化される。

●異形性母斑症候群 dysplastic nevus syndrome (DNS)
メラノーマと色素細胞母斑様病変が多発性に生じる症候群。家族性、遺伝性の症例と非家族性の孤発例とがある。
本症例でみられる母斑様病変は通常の母斑と比較し、やや大型で、形状、色調が多少不規則であり、組織学的にも胞巣による表皮突起の連結などの特異な所見を呈することから、メラノーマの前駆病変と考えられたが、異形性母斑と診断されるほとんどは良性の色素性母斑(Clark母斑)との説もある。

●遺伝子再構成 gene rearrangement
体細胞の遺伝子断片間で組み換えが起こり、新しい遺伝子が構成されることをいう。
免疫グロブリンを産生するB細胞やT細胞受容体を発現するT細胞の分化の過程でみられ、抗原に対する多様性を発現するために必須の機構。

●遺伝子相同組換え homologous recombination
染色体上の内在遺伝子配列と塩基配列上の高い相同性をもつ遺伝子断片が、ある確率で染色体の相同な部分と組換えを起こし、外来遺伝子が入り込む現象をいう。
この現象を応用すると、ある特定の内在性遺伝子を標的として外来遺伝子を導入することができ、またその遺伝子を破壊することができる(遺伝子ノックアウト、遺伝子ターゲッティング)。

●ウロカニン酸 urocanic acid
皮膚、肝臓においてヒスチジンからヒスチダーゼによる脱アミノ化によって産生される分子量138の物質である。
紫外線照射により、trans型はウロカナーゼにより代謝されるが、皮膚にはその代謝酵素が欠損しているため、表皮内で生成されたウロカニン酸は角層内に蓄積する。
250-400nmの紫外線吸収物質として、紫外線防御機構に作用していると考えられる。

●エイコサノイド eicosanoid
細胞が何らかの刺激や障害を受けて、細胞内のホスホリパーゼA2がカルシウム依存性に活性化され、リン脂質より、不飽和脂肪酸であるアラキドン酸が遊離する。
このアラキドン酸は速やかに代謝されてシクロオキシゲナーゼ経路によりプロスタグランジン、トロンボキサンが生成。
5-リポキシゲナーゼ経路によりロイコトリエンなどの生理活性脂質が生成される。
これらの物質は炭素数が20個であることからエイコサノイドと総称され、その生合成経路全体をアラキドン酸カスケードと称する。

●エイズ acquired immunodeficiency syndrome (AIDS)
発感染して3-6週間目に発熱などの急性期症状が現れ、自然軽快後、数年から10数年の無症候期を経て発症。HAART導入により、予後改善。

●エピトープ epitope
抗体によって認識される分子内の抗原決定基で、蛋白分子の場合通常10数個のアミノ酸配列からなる。
水疱性類天疱瘡と妊娠性疱疹の病原性エピトープは180kD水疱性類天疱瘡抗原のNC16Aと呼ばれる膜近傍の部に存在する。

●エピリグリン epiligrin
表皮基底膜の特異的細胞外マトリックスで基底細胞のfocal contact(細胞-基質間にみられる強い接着のことで、弱い接着を意味するclose contactと対比される)においてはインテグリンである、α3β1とヘミデスモゾームにおいてはα6β4と結合する糖蛋白である。
Herlitz(ヘルリッツ)型の致死型接合部先天性表皮水疱症はエピリグリンの遺伝子異常であることが示される。
炎症あるいは表皮-基底膜部の接着構造維持に重要な役割を果たす。

●エラスチン elastin
弾力線維を構成する腫瘍蛋白の1つ。真皮の線維芽細胞より生成される。皮膚の伸展性に重要な役割。

●オートクリン(オートクライン) autocrine
細胞成長因子の作用様式の一種。細胞が自ら細胞成長因子を産生・分泌し、自らに作用するもの。
代表的なものは表皮ケラチノサイトにおけるEGFファミリー細胞成長因子(TGF-α、アンフィレグリン、HB-EGF、エピレギュリン)が知られている。

●オゾン層破壊 disruption of the ozone layer
20km上空の成層圏に存在し、生物にとって傷害作用の強いUVCの全てとUVBの一部を吸収している。

●温熱療法 hyperthermia
病巣部を42-47度に加温する治療法。
スポロトリコーシス、クロモミコーシス、皮膚非定型抗酸菌症、乾癬、掌蹠膿疱症、円形脱毛症などに用いられてきた。

●カドヘリン cadherin カドヘリンは様々な組織の形態形成に重要な役割を果たしている一群のCa2+依存性細胞接着分子である。 ●ガンシクロビル ganciclovir
抗ウイルス薬の一つで、核酸塩基のグアニンのアナログで、ウイルスのチミジンキナーゼによりリン酸化され、最終的に3リン酸となってウイルスDNAポリメラーゼを阻害してウイルスDNA合成を阻害する。
サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、EBウイルス、アデノウイルスに対して抗ウイルス作用を示すが、水痘・帯状疱疹ウイルスにはその活性は弱い。

●蚊アレルギー mosquito allergy
蚊にさされた数時間後より、局所の発赤、腫脹、潰瘍形成などの激しい反応をきたし、発熱などの全身症状を伴う疾患である。瘢痕を残す。
既往歴、家族歴にアトピー性疾患をもつ場合が多い。悪性組織球腫、悪性リンパ腫などの間葉系悪性腫瘍を発症して死亡に至った例が報告されている。

●過酸化脂質 lipid peroxide
紫外線の照射により表皮では脂質の過酸化が起こる。脂溶性であるαトコフェロールは脂質の過酸化を抑制する。

●顆粒変性 granular degeneration
表皮角化細胞の細胞質内にエオジン好性の線維状あるいは粒状の物質が出現する変化。有棘層上層および顆粒層の細胞でみられる角化異常である。
水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症の場合、免疫電顕によりこれらのエオジン好性物質はケラチン中間径線維の異常凝集物であることが証明されている。
水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症、Vorner型掌蹠角化症、Siemens型水疱性魚鱗癬、列序性表皮母斑、表皮融解性棘細胞腫などで観察される。

●角化関連蛋白 keratinization associated protein
角化細胞が分化(角化)する際に発現する蛋白の総称。
分化型ケラチン(K1,K10など)、周辺帯前駆体蛋白(インボルクリン、ロリクリンなど)、トランスグルタミナーゼ1,3、(プロ)フィラグリンなどがこれにあたる。
インボルクリンは周辺帯の構成蛋白で、グルタミン、グルタミン酸に富む可溶性蛋白。有棘層上層で発現し、辺縁帯に早期に架橋される。
ロリクリンはこれに遅れて顆粒層最上層になってから発現。グリシン、セリン、システインに富む不溶性蛋白。
インボルクリンを主とする周辺帯の枠組みの上に架橋され、最終的に表皮の周辺帯の70%を占める主成分となる。
プロフィラグリンは顆粒層で発現する。アルギニン、グルタミン/グルタミン酸、グリシン、セリン、ヒスチジンに富む。
フィラグリンはケラチンを凝集させる働きをもつ。

●完全抗原 complete antigen
分子量が1万以上の蛋白質あるいは多糖類は抗原となるが、そのもの自体で抗体産生を惹起するものを完全抗原、それ自体では抗体産生を誘導できず、別の蛋白質と結合して抗体産生を惹起するものを不完全抗原またはハプテンという。
皮膚科では薬疹の際、分子量の小さい薬剤が原因となるときは、薬剤はハプテンとしてはたらき、生体内蛋白質が担体蛋白となるものと考えられる。

●間質性肺炎 interstitial pneumonia
全身性強皮症では抗トポイソメラーゼⅠ抗体、PM/DMでは抗Jo-1抗体が肺病変の出現、進行を予測するのに有用。

●幹細胞 stem cell
自己複製能力を有し、かつ分化、成熟した細胞を供給する能力をもつ。表皮の幹細胞は基底層の細胞のごく一部でゆっくりとした周期で分裂を繰り返す。

●癌遺伝子 oncogene
①増殖因子群(sisなど)
②受容体型チロシンキナーゼ群(erb Bなど)
③非受容体型チロシンキナーゼ群(srcなど)
④ras群(H-、K、N-ras)
⑤セリン・スレオニンキナーゼ群(rafなど)
⑥核蛋白質群(myc、fosなど)
⑦その他 (サイクリンD1など)

●癌抑制遺伝子 tumor suppressor gene
高発癌性遺伝子疾患の原因遺伝子であると同時に散発性腫瘍でも異常が見いだされる。
癌遺伝子が対立遺伝子の一方の異常で活性化されたのに対し、癌抑制遺伝子の不活性化には双方の遺伝子異常が必要となる。

●基底膜部 basement membrane zone
表皮真皮境界部。表皮基底細胞細胞膜の真皮に面した部分にはヘミデスモゾームが存在。
ヘミデスモゾームはBP230やBP180をはじめ、多数の分子の集合体。基底細胞細胞膜の直下には透明層があり、係留細線維が存在。
透明層は表皮基底層の中で物理的に最も弱く裂隙を生じやすい。さらにその下方では基底板や係留線維が認められる。
基底版は主にⅣ型コラーゲンから構成される電子密度の高い層。電顕的な意味での基底膜に相当する。
また係留線維はⅦ型コラーゲンが主成分であり、この線維は基底板にその両端を付着させ、表皮内でフックのような半弧状を呈していることも最近明らかになった。

●偽アトピー性皮膚炎 pseudo-atopic dermatitis
金属アレルギーに基づいて発症する全身性の湿疹病変。
クロム、ニッケルなどに繰り返し曝露されること、あるいは歯科金属や食品中の微量金属により起こる。
成人発症であること、冬季でなく、夏季増悪傾向を示し、好酸球増多や白色皮膚描記症がみられない。

●逆転写酵素阻害薬 reverse transcriptase inhibitor(RT1)
HIVの遺伝情報はRNAにコードされており、ウイルスの複製にDNAの転写が必要なため、ウイルス自身が逆転写酵素を産生する。
この酵素を阻害する薬剤は2種類あり、1つはヌクレオシド類似体で、ジドブジン(AZT)、ジダノシン(DDI)、ザルシタビン、スタブジン、ラミブジンなどが含まれる。
二つ目は非ヌクレオシド類似体でネビラピンなどがある。
これらの逆転写酵素阻害薬とプロテアーゼ阻害薬との多剤併用療法(HAART)によりHIV RNAコピー数を検出限界以下に下げる臨床効果が得られる。

●強皮症腎 scleroderma kidney
SScの典型的腎病変は、腎機能が急速に低下する急性進行性糸球体腎炎の型である。悪性高血圧を呈し、急速に腎不全に進行する。
早期発見と、ACE阻害薬による血圧コントロールが重要。強皮症腎の発症は抗RNAポリメラーゼ抗体の存在と強い相関を示す。
本邦のSSc患者では数%の陽性頻度であり、これが本邦の強皮症腎の発生頻度が少ない原因と考えられる。

●くすぶり型成人T細胞白血病 smoldering adult T cell leukemia
HTLV-1感染による白血病/リンパ腫は、急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型(および皮膚型)にわけられる。
くすぶり型は、リンパ球数4000/mm3未満、異常リンパ球5%異常(ただし皮膚または肺に悪性リンパ球があれば5%未満でも可)で、花びら様細胞が時々みられ、血液性化学でLDHが正常上限の1.5倍以上、補正Ca値5.5mEq/l以下であり、腫瘍病変がリンパ節など内蔵にないものと定義される。

●ケミカルメディエーター chemical mediator
①細胞内顆粒に貯蔵され、抗原刺激などにより遊離される物質
ヒスタミン、セロトニン
②新たに細胞膜リン脂質より合成され、細胞外へ分泌される物質
シクロオキシゲナーゼにより生成されるプロスタグランジン
リポシゲナーゼより生成されるロイコトリエン

●ケモカイン chemokine
白血球走化性・活性化作用を有する内因性の塩基性蛋白質分子群でヘパリン結合性が強い。

●ケラチン keratin
ケラチンは細胞骨格蛋白の1つである中間径線維に属し、細胞の形態維持に大きな役割を果たしている。
一般に分子量の大きい(typeⅡ)ケラチン群(K1-8)と分子量の小さい酸性(typeⅠ)ケラチン群(K9-19)に分類されている。
またこれらのケラチン群に加え、Merkel細胞に発現しているK20や小腸上皮に発現しているK21、また毛皮質に発現している毛型ケラチン群(ハードケラチン群)が存在する。
ケラチンは常に2つの特定のケラチンが対を作り、個々の上皮組織において異なる組み合わせで発現されている。
単層上皮 K8/K18
重層扁平上皮 K5/K14
分裂能が著しく高い細胞ではK6/K16/K17が発現している。
さらに皮膚、角膜、食道、掌蹠ではK1/2e/K10、K3/K12、K4/K13、K9などがそれぞれ発現している。

●ケラチン病 keratin diseases
ケラチン病とは、ケラチン遺伝子の変異により発症する疾患群の総称。
ケラチン病には単純型表皮水疱症、水疱型魚鱗癬様紅皮症、Siemens型水疱性魚鱗癬、Vorner型掌蹠角化症、先天性硬厚爪甲症、連珠毛などが含まれる。

●係留線維 anchoring fibril
表皮真皮の結合に最も重要な役割を果たす微細構造物の1つ。主成分はⅦ型コラーゲンである。基底板に両端を付着させ、真皮内でフックのような半弧状を呈している。

●経表皮水分喪失 transepidermal water loss
エボポリメーターという器械を用いると、単一時間、単一面積あたりの経表皮水分喪失を測定できる。

●経表皮的排除 transepidermal elimination
蛇行状穿孔状弾力線維症では弾力線維が排除される。クロモミコーシスでは偽癌性増殖を伴う。
赤血球、トレポネーマなどでは表皮の構造を大きく破壊せず排除される。
一方、アミロイド、カルシウム塊、膠原線維、弾力線維などでは大きな塊状物として排除され、疣贅状の臨床像、あるいは潰瘍を形成する。
慢性腎不全患者では穿孔性皮膚症ないし、異物排除性皮膚症と呼ばれる穿孔性毛包炎、反応性穿孔性膠原症、Kyrle病などの病態を生じる。

●血漿交換療法 plasmapheresis
①二重濾過膜法は、免疫グロブリンなど中分子以上の物質を除去する方法で、天疱瘡や類天疱瘡などの自己免疫水疱症で試用される。
②免疫吸着法は抗原特異的抗体の除去を目的として、SLEなどで試用される。

●コラーゲン collagen
コラーゲン線維を構成する蛋白。皮膚に存在する主なコラーゲンはⅠ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ、XⅦ型である。
Ⅰ型コラーゲンはほとんど全ての器官の結合組織に普遍的に存在する代表的なコラーゲン。皮膚でもコラーゲンの80%近く占めている。
Ⅲ型コラーゲンは幼若な皮膚に多く含まれ、加齢とともに減少する。細網線維(レチクリン)はⅢ型コラーゲンの割合の多い幼若なコラーゲン線維である。
Ⅲ型コラーゲンは血管壁に多く存在し、その遺伝子異常によりEhlers-Danlos症候群のⅣ型(出血型)をきたす。
Ⅳ型コラーゲンは表皮真皮境界部(DEJ)の基底膜部を構成するコラーゲンである。
Ⅴ型コラーゲンは細胞周辺の基底膜を形成する。このコラーゲンの遺伝子異常がEhlers-Danlos症候群のⅠ型をきたす。
Ⅵ型コラーゲンは細線維を構成するコラーゲン。
Ⅶ型コラーゲンは係留線維を構成するコラーゲン。このコラーゲンの遺伝子異常が栄養障害型表皮水疱症をきたす。
XⅦ型コラーゲンはヘミデスモゾームを構成する細胞膜貫通型のコラーゲン。180kDa、類天疱瘡抗原(BPAG1)に相当する。

●コラゲナーゼ collagenase
コラーゲンを分解する酵素群につけられた名称。最近はこれらを一括してマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)と呼んでいる。
皮膚に存在する代表的なもの。
MMP-1(間質型コラゲナーゼ)は線維芽細胞、ケラチノサイトで産生され、間質型コラーゲン(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ型)をヘリックス部位で切断する。
MMP-8(PMN-typeコラゲナーゼ)は多核球白血球により産生されMMP-1と同様の基質特異性を示す。但し、MMP-1に比べてⅠ型コラーゲン分解活性が高い。
MMP-2(72kDaゼラチナーゼ、Ⅳ型コラゲナーゼ)は線維芽細胞、ケラチノサイトで産生され変性され変性コラーゲン(ゼラチン)Ⅳ、Ⅴ、Ⅶ型コラーゲンを分解する。
MMP-9(92kDaゼラチナーゼ、Ⅳ型コラゲナーゼ)はケラチノサイトで産生されMMP-2と同様の基質特異性を有する。

●コロイド小体 colloid body
表皮を構成する角化細胞の変性物。液状変性を伴う疾患での出現頻度が高い。
●口腔内灼熱症候群 burning mouth syndrome
中年女性に多い。
①局所原因 カンジダ症、地図舌、歯科材料アレルギー
②全身的因子 栄養障害、閉経、糖尿病、Sjogren症候群、唾液分泌減少を生じる薬剤の服用、喫煙、鉄欠乏性貧血、悪性貧血、ビタミンB2欠乏症
③心理的因子 不安、恐怖、うつ状態

●光線性エラストーシス actinic elastosis
HE染色で好塩基性、PAS染色陽性、Van Gieson染色で黄染する線維の変性層が認められる。この部位では酸性ムコ多糖類の増加が確認されている。

●好酸球増多筋痛症候群 eosinophilia-myalgia syndrome (EMS)
L-トリプトファン内服歴のある患者に発生した、好酸球性筋膜炎および強皮症類似の皮膚症状と疼痛を伴う神経障害を示す疾患。
①著明な好酸球増多、②全身の筋肉痛、疼痛、③感染、腫瘍を除外できる、の3項目を満たすことが診断基準。
特定の会社で特定の時期に生産されたL-トリプトファン製品に含まれる微量成分によると推定。

●好酸球増多症候群 hypereosinophilic syndrome(HES)
①6カ月以上持続する1500/mm3以上の末梢血好酸球増加
②寄生虫、アレルギー、悪性腫瘍などの好酸球増加をきたす疾患を否定できる
③好酸球浸潤による臓器障害を伴う

●好酸球遊走因子 eosinophilic chemotactic factor of anaphylaxis(ECF-A)
IgEが関与するⅠ型アレルギーにおいて、肥満細胞や好塩基球から遊離される化学伝達物質の1つ。ECF-Aは好酸球を局所に集める作用と活性化する作用をもつ。

●抗アレルギー薬 antiallergic drug
マスト細胞を安定化させ、アレルギー反応によるアレルギー性化学伝達物質の遊離を抑制する薬剤。
抗ヒスタミン作用をもつものと、もたないものに大別される。
日本アレルギー学会では、アトピー性皮膚炎には抗アレルギー薬が抗ヒスタミン薬よりやや優れていると評価している。
また抗アレルギー薬長期の内服で高い有用性が得られるとされている。

●抗リン脂質抗体症候群 anti-phospholipid syndrome (APS)
本症は抗リン脂質抗体の存在を必須とし、動静脈血栓症、習慣性流産を主徴とする。
抗リン脂質抗体は多種存在するが、本症は抗カルジオリピン抗体(β2グリコプロテインⅠ依存性と非依存性とがある。)とループスアンチコアグラントが存在する。
APTTの延長の有無でスクリーニングをする。

●抗核抗体 antinuclear antibody (ANA)
①抗2本鎖DNA抗体:SLEに特異的。病勢に一致して抗体価が変動する。
②抗SM抗体:SLEに特異的。ループス腎炎と相関。
③抗U1-RNP抗体:MCTDでは100%に出現。他の膠原病でも検出されるが、日本人で同抗体陽性例は原発性肺高血圧症と相関。
④抗トポイソメラーゼⅠ(Scl-70)抗体:びまん性皮膚硬化を伴う全身性強皮症(SSc)に特異的。肺線維症と相関。
⑤抗セントロメア抗体:肢端硬化を伴う全身性強皮症状に特異的。
⑥抗Jo-1抗体:多発性筋炎に特異的。慢性間質性肺炎と相関。
⑦抗SS-A抗体:当初Sjogren症候群に特異的と報告されたが、広く膠原病に分布。新生児エリテマトーデスと相関。
⑧抗SS-B抗体:Sjogren症候群に特異的。

●黒化 tanning
黒化は紫外線による色素増強であり、2種類ある。
第1次黒化(即時型黒化)とは長波長紫外線(UVA320-400nm)または可視光線の照射中または照射直後に現れる一過性の灰褐色の色素増強で、照射中止後10-15分で消退する。
第2次黒化とは中波長紫外線(UVB290-320nm)を受けた皮膚に現れる遷延型色素沈着(サンタン)をさす。
大量のUVB被曝は12-24時間をピークに紅斑、浮腫、水疱などの急性皮膚炎症(サンバーン)を起こし、炎症症状が消退する3日目頃より褐色調の色素沈着が生じる。色素沈着は長く残る。
UVBによる皮膚反応は曝露エネルギーと個人のスキンタイプに依存する。
一般にサンバーンは皮膚色の白い人(日本人スキンタイプⅠ)に強く、サンタンは皮膚色の濃い人(スキンタイプⅢ)に強い。

●骨髄異形成症候群 myelodysplastic syndrome (MDS)
MDSにみられる皮膚科的合併症としての報告はSweet病、壊疽性膿皮症、好中球性皮膚症、結節性紅斑様皮疹、凍瘡様皮疹、SLE、反復性多発性軟骨炎、反復性顔面浮腫などである。

●サイトカイン sytokine
T細胞を代表とする免疫担当細胞から産生される生物活性物質。

●サザンブロッティング法 Southern blotting
宿主DNAのうち特定の塩基配列をもつ部分をバンドの位置として検出する技術。
制限酵素で消化された宿主DNAをアガロースゲル電気泳動等により分子量によってふるいわけ、それらのDNA断片のうち、プローブと相補的な塩基配列をもつDNA断片をバンドとして検出する。

●サンスクリーン sunscreen
遮光成分として紫外線を化学的に吸収するPABA、ベンゾフェノン(オキシベンゾンなど)、桂皮酸などの吸収材と、紫外線を物理的に散乱、遮断する酸化チタン、酸化亜鉛などの散乱剤がある。
効力はUVBに対するものはSPFで、UVAに対するものはPAで表される。

●細胞外マトリックス extracellular matrix
真皮の細胞群(線維芽細胞など)の間を埋める物質(間質)をECMと呼ぶ。コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、フィブロネクチンなどの糖蛋白からなる。

●細胞骨格 cytoskeleton
真核細胞の細胞質内に広がる蛋白質性の線維からなる3次元的網状構造である。
①太さ5~6nmのマイクロフィラメント(アクチンフィラメント)
②太さ約10nmの中間径線維(10nmフィラメント)
③太さ約25nmの微小管

●細胞傷害性T細胞 cytotoxic T cell (CTL)
CD8陽性で、T細胞受容体のαβ鎖を有する。
標的細胞上のMHCクラスⅠ分子とともに表出された抗原ペプチドを認識し、パーフォリン、グランザイムBなどを放出し細胞を傷害する。
皮膚科領域ではGVHD、扁平疣贅の自然消退減少、メラノーマや皮膚T細胞性リンパ腫における抗腫瘍反応などを媒介する。
扁平苔癬や接触皮膚炎のあるステージでの浸潤細胞、乾癬の表皮内リンパ球もCD8陽性である。

●細胞成長因子 cell growth factor
EGF、TGF-β、G-CSFなどがある。
EGFファミリーはオートクリン因子として表皮ケラチノサイトの増殖あるいは遊走促進などの作用をもつTGF-α、アンフィレグリン、HB-EGF、エピレギュリンなどがよく知られている。
TGF-βファミリーはTGF-β1~3が、表皮ケラチノサイトをはじめとする多くの細胞に強力な増殖抑制因子として作用するほか、コラーゲンなどの細胞外マトリックスの産生を促進するなど多彩な作用をもっている。
G-CSFは好中球系前駆細胞をはじめとする好中球の増殖、分化、及び機能亢進といった幅広い作用をもち、臨床的に化学療法あるいは放射線療法後の顆粒球減少症の治療に用いられている。

●細胞接着因子 cell adhesion molecule
接着分子のほとんどは膜貫通型の糖蛋白で、その構造の類似性からインテグリン、セレクチン、カドヘリン、免疫グロブリンスーパーファミリーなどに分類されている。
接着分子の多くは複数のリガンド(カウンターレセプター)と結合する。
ケラチノサイト同士の接着のように同じ接着分子同士が結合する場合(ホモフィリックな接着)と、白血球と血管名内皮細胞の接着のようにたがいに相補的な構造をもつ接着分子同士の結合(ヘテロフィリックな接着)がある。

●細胞内刺激伝達 signal transduction
受容体の会合、アダプター分子の会合とチロシンリン酸化、G蛋白RasによるRaf-1
の膜への転移とMAPキナーゼ活性化による核への刺激伝達回路、一方、別回路では、受容体からのチロシンリン酸化はホスホリパーゼCの活性化とその下流のカルシウム細胞内流入とプロテインキナーゼCの活性化を介して、核その他の刺激伝達系に刺激を送る。
●最小紅斑量 minimal erythema dose
UVB光源を皮膚に照射して24時間後にかろうじて肉眼で鑑別できる紅斑が生じるのに必要な紫外線量。正常人では600~1200J/mm2である。
正常人の紅斑の出現ピークは12~24時間後であるが、色素性乾皮症の患者ではそのピークが72時間後に遷延することが多い。
PUVA療法に際し、初回UVA照射量を決定するのに、ソラレン外用後UVAを照射し、24時間後に紅斑を生じせしめる最小のUVA線量をUVBによる紅斑と区別して光毒性物質で惹起される紅斑の意味で最小光毒量(MPD)という。

●シイタケ皮膚炎 shiitake dermatitis
生シイタケ中の熱分解性物質あるいはレンチナンによる中毒疹。生シイタケを食べた数時間後に激しい痒みのため紫斑性の数本ずつからなる長い爪跡を残している。

●シクロオキシゲナーゼ cyclooxygenase (COX)
アラキドン酸代謝における初段階の酵素であり、プロスタグランジン、トロンボキサンなどプロスタノイド類の共通前駆体であるプロスタグランジンH2の生合成を触媒している。
COXには2つのアイソザイムがあり、多くの組織で恒常的に発現しているCOX-1に対してCOX-2は細胞分裂促進物質やサイトカインなどの刺激によって誘導され、多くの炎症反応に関与している。
NSAIDsはCOX-1とCOX-2の両方を阻害するため、胃腸障害などの副作用を引き起こす。COX-2のみを選択的に阻害する新しいNSAIDsの開発が望まれている。

●シクロスポリン cyclosporine A (CYA)
シクロスポリンは真菌のTolypocladium inflatum
Gamsの培養濾過液から分離された11個のアミノ酸からなる中性、疎水性の分子量の大きい環状ポリペプチド。
ヘルパーT細胞のIL-2、3、4、5、IFN-γなどサイトカインのmRNAの転写を抑制し、臓器移植の拒絶反応の抑制に貢献。
吸収を一定化させるため、新しい錠形のサンディミュン‐ネオラルが開発されている。

●自由神経終末 free nerve ending
表皮、真皮境界部及び毛包周囲に分布し、先端が自由に終わる知覚神経線維の末端。真皮網状層に入り髄鞘を失った神経線維は、真皮乳頭層で神経叢を作る。
この部から終末分枝に分かれた神経終末は真皮乳頭部にいたり一部は表皮内に侵入する。この神経線維の末端では軸索が膨大し終末ボタンを形成する。

●色素性乾皮症 xeroderma pigmentosum (XP) 常染色体劣性遺伝。細胞にUVが照射されて生じたDNAの損傷の修復は、正常人ではヌクレオチド除去修復という機構で行われるが、XPでは修復機構に欠陥がある。

●軸索反射 axon reflex
中枢神経を介さず何らかの反応を引き起こす現症。
蕁麻疹にみられる紅斑の拡大や、皮膚の強い刺激によっておこる紅斑反応は、局所麻酔や神経を変性させる前処置によって抑制されるため、軸索反射によって起こると考えられている。

●腫瘍随伴性天疱瘡 paraneoplastic pemphigus
主としてB細胞悪性リンパ腫を伴う疾患。こう腔粘膜と眼粘膜の両方が侵される。
病変皮膚は蛍光抗体直接法ではIgGが表皮細胞膜に、また補体C3が表皮基底膜部に沈着する。
最近、この疾患においても尋常性天疱瘡と同じデスモグレイン3に対する抗体が存在し、病変形成に重要であることが示された。

●周辺帯 marginal band
角化細胞が分化し顆粒層上層に達すると、細胞膜の内側に形成しはじめる厚さ15~20nmの帯状の構造物。

●出生前診断 prenatal diagnosis
胎児の皮膚構造がほぼ完成する妊娠19週頃に胎児皮膚を採取する方法が従来の方法。
最近では妊娠10週で絨毛膜生検を行い、抽出した胎児DNAを用いる遺伝子レベルの検索が臨床導入されている。

●新型ツツガムシ病 tsutsugamushi disease
ツツガムシの幼虫の吸着により、Rhikettsia
tsutsugamushiが感染しておこる。アカツツガムシ(夏に好発)による古典的ツツガムシ病は減少し、現在は全国的にフトゲツツガムシ(初夏、冬)、タテツツガムシ(秋から冬)による新型ツツガムシ病が多い。
刺し口は被覆部が多い。水疱底から蛍光抗体直接法でリケッチアを証明することができる。
虫刺後10日前後で発熱、リンパ節腫脹、さらに数日後に全身に浮腫性紅斑、紅色丘疹が多発。

●新生児エリテマトーデス neonatal lupus erythematosus (NLE)
SLE、Sjogren症候群ないし無症状の母親から出産した新生児にみられる。環状紅斑、先天性心ブロック(予後因子として重要で、ペースメーカーが必要となることもある。
これ以外は一過性で、無治療で経過をみる。)を主体とした症候群。経胎盤的に胎児に移行した自己抗体、特に抗SS-A抗体が関連する。
抗SS-A抗体陽性の母親からの出生時中2~9%に発症。環状紅斑は生後3か月頃までに出現し、顔面、頭部を中心に全身に多発し、生後6か月頃には自然消退する。

●蕁麻疹様紅斑 urticaria-like erythema
通常の蕁麻疹は比較的短時間(数十分~数時間以内)に跡形なく消退するが、蕁麻疹様紅斑は出現時間が通常の蕁麻疹と比較して長く、1~数日間、時にはそれ以上持続し、消退後に軽度の落屑や色素沈着を残す膨疹ないし浮腫状紅斑である。
軽度の発熱、関節痛などの全身症状を伴うことがある。
組織学的に真皮毛細血管にleucocytoclastic vasculitisを認めた場合、蕁麻疹様血管炎と呼ぶ。

●スーパー抗原 superantigen
細菌(黄色ブドウ球菌、A群レンサ球菌)、ウイルス、植物に由来するT細胞群を刺激する抗原。
多くのT細胞群を刺激しうる特異な抗原。T細胞受容体のVα、Jα、Vβ、Dβ、Jβの5つのコンポーネントを使って認識する。
スーパー抗原の場合、他の4つのコンポーネントが何であってもVβさえ合えばそのT細胞を刺激することができる。

●スキンケア skin care
老人性乾皮症では角層細胞の層数が増し、面積も増加するので、バリア機能は低下しないが下からの水分の補給が十分ではなく、乾皮症が生じる。

●スキンタイプ skin type 紫外線に対する皮膚の感受性を表す。スキンタイプⅠ~Ⅵまで分けられている。
スキンタイプⅠは白人で、紫外線曝露で常に紅斑(サンバーン)を生じるが、決して色素沈着(サンタン)を起こさない。
スキンタイプⅥは黒人で、決してサンバーンは起こさない。日本人はⅡ、Ⅲ、Ⅳに属することが多い。

●ステロイドスルファターゼ steroid sulfatase
ステロイドホルモンやコレステロールのステロール環3β位硫酸基を加水分解する酵素。
この酵素は表皮角層の細胞間に存在する硫酸コレステロールを脱硫酸化し、コレステロールに変換することにより、角質細胞間の接着・剥離機序に関与していると推定される。
この酵素の遺伝子はX染色体上に存在し、伴性遺伝性魚鱗癬では、この遺伝子が広範に欠失しているため、角層が剥離せず、堆積する。

●スプリットスキン法 split skin method
ヒト皮膚を1M食塩水処理すると、表皮が基底膜の透明板で剥離する。
この剥離された皮膚を蛍光抗体間接法の基質として用い、抗原マッピングにより抗体の反応部位を推定する方法。
基底膜抗体のエピトープが透明板より上部に存在する分子であれば表皮側と反応するが、下部に存在する場合は真皮側の基底膜と反応する。
例をあげると、水疱性類天疱瘡の患者血清はヘミデスモゾームに対する自己抗体を有するため、表皮側と反応するが、後天性表皮水疱症では係留線維(Ⅶ型コラーゲン)に対する自己抗体を有するため、真皮側と反応する。

●水性蕁麻疹 aquagenic urticaria
極めて稀な物理的蕁麻疹。いかなる種類の水(海水、蒸留水)との接触でも反応するが、氷、アセトン、エーテルとの接触では発症しない。

●成人(発症)Still病 adult (onset) Still’s disease
男女比1:2、弛張熱(39度以上、1週間以上持続)、関節痛(2週間以上持続)、紅斑(一過性でサーモン色)、白血球増多(10000/mm3以上、好中球80%以上)を特徴とし、リンパ腺腫大、肝機能異常、咽頭痛などウイルス感染症に類似した病態もみられる。
リウマチ因子は陰性、血中フェリチン高値。

●星(芒)状体 asteroid body
星形をした特徴的な構造物を観察することがある。異なった2種類の病態が区別されている。
類上皮細胞性肉芽腫の多核巨細胞の胞体内に観察される星芒状の封入体はサルコイドーシスを示唆することが多い。
ただし、他の肉芽腫でも観察されることがあるため、特異的な所見ではない。
一方、スポロトリコーシスの病変のHE染色標本に観察されることのある好酸性放射状構造も星状体という。
微小膿瘍内あるいは巨細胞内にある。中心には直径3~5μm程度の球形の菌要素があり、その周囲に好酸性に染色される放射状構造がある。
スポロトリコーシスの診断の補助になるが、アスペルギルス症などでも観察される。

●染色体ウォーキング chromosome walking 取得したDNA断片の末端付近をプローブとして用いて、これと一部が重複するDNA断片を遺伝子ライブラリーからスクリーニングする。この操作を繰り返すことにより、目的とする遺伝子の全領域を得ることができる。
●全身接触型皮膚炎 systemic contact-type dermatitis
経皮的に感作が生じた物質を非経皮的に摂取することによって、全身に皮膚炎を生じた状態を指す。

●組織球貪食脂肪織炎 cytophagic histiocytic panniculitis
血球貪食症候群の皮膚症状を組織学的観点から呼称したもの。組織球とリンパ球の増殖を認める。
本態は皮下型T細胞性リンパ腫と考えられている。皮疹は発赤・圧痛を伴う皮下硬結で、しばしば出血性変化を伴う。皮疹出現時に発熱も伴う。
組織学的に皮下脂肪織の小葉性脂肪織炎の像を呈し、増殖した組織球が赤血球、核塵、血小板を盛んに貪食している像(bean bag(お手玉) cell)が特徴的とされている。

●爪上皮出血点 nailfold bleeding
爪上皮出血点は全身性強皮症(SSc)および混合性結合組織病(MCTD)の70~80%、皮膚筋炎の30%にみられるが、SLEや原発性Raynaud病では10%以下である。
健常者でもその3%に爪上皮出血点が認められるが、複数指に同時に認められることは稀である。

●タクロリムス tacrolimus
タクロリムスはマクロライド系化合物で筑波山麓の土壌に生息する放線菌の産生する免疫抑制物質として単離された。
シクロスポリンの1~10%の濃度で同等の作用があり、移植の拒絶反応の抑制に有効。

●体外循環光化学療法 extracorporeal photochemotherapy
ソラレン内服後、血液を取り出し、リンパ球分画にUVAを体外で照射し、また体内に戻す方法。
T細胞は抗原性が増強されるために再び体内に移入することにより当該T細胞への免疫が高まり治療効果をもたらすと考えられている。
皮膚リンパ腫、強皮症、天疱瘡、GVHD、等に用いられている。

●対立遺伝子 allele
特定の染色体上の同一遺伝子座を占める2つ以上の異なった遺伝子のうち1つの呼称(簡単に考えると父親からもらった1個の遺伝子と母親からもらったもう1個の同じ遺伝子のうち一方の遺伝子)。

●苔癬型組織反応 lichenoid tissue reaction
真皮上層のT細胞を中心とした表皮向性の細胞浸潤と、それに伴う、表皮基底層の変性により特徴づけられる組織反応。
この際にみられる表皮ケラチノサイトの傷害はアポトーシスとして観察される。
扁平苔癬、固定薬疹、多形紅斑、エリテマトーデス、皮膚筋炎、GVHD、アミロイド苔癬、色素失調症など様々な疾患で認められる。

●チロジナーゼ遺伝子 tyrocinase gene
メラノサイトにおいて、チロシンから始まるメラニン生成経路の律速酵素であるチロジナーゼをコードする遺伝子。
この遺伝子変異でチロジナーゼ活性が消失するとメラニン色素生成が起こらない。これがチロジナーゼ陰性型白皮症。眼皮膚白皮症でもっとも重篤な症状。
眼皮膚白皮症はメラニン色素生成が欠如または低下する常染色体劣性遺伝疾患。
その病因遺伝子によりⅠ型:チロジナーゼ遺伝子関連型、Ⅱ型:p遺伝子型、Ⅲ型:チロジナーゼ関連蛋白1型などに分類される。

●遅発型アレルギー反応 late phase reaction
皮膚肥満細胞を抗原、抗IgE抗体などで刺激したときに即時相に引き続き生じる遅発相の反応。
通常、刺激の6-8時間後に始まり、24-48時間まで持続する硬結性の紅斑反応を生じ、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の慢性化に重要と考えられている。

●腸バイパス症候群 bowel bypass syndrome
病的肥満の治療法として空腸-回腸バイパス手術を行った患者の約20%に3カ月~10年後に出現する症候群。
四肢に好発する水疱、膿疱、移動性多発性関節炎、関節痛、筋肉痛、腱・腱鞘炎、発熱、全身倦怠感、下痢を伴う鼓腸などを特徴する。
症状は一過性、反復性で女性に多く、赤沈亢進、血中sIgA増加、クリオグロブリン血症、血中免疫複合体を認める。
病理では真皮に核破壊を伴う著明な好中球の浸潤があり、時に壊死性血管炎を伴う。
皮膚、腎臓では基底膜に免疫グロブリン、補体成分、大腸菌・D群連鎖球菌。バクテロイデスなどの細菌抗原の沈着がみられる。

●デスモゾーム desmosome デスモゾームは主に上皮系の細胞の細胞間接着に重要な役割をしている細胞構造。
ケラチンなどの中間径線維が結合し、膜蛋白としてデスモグレイン(Dsg)、デスモコリン(Dsc)を有する。
Dsg、Dscはそれぞれ3種類のアイソタイプが知られるが、Dsg3およびDsg1は重層扁平上皮にのみ発現がみられる。
デスモゾームの裏打ち蛋白としては、プラコグロビン、デスモプラキンの存在が知られており、最近ではさらに、エンボプラキン、ペリプラキンなども関連蛋白として発見されている。

●テロメラーゼ telomerase
真核生物の染色体末端部分であるテロメアにはDNA末端が存在し、5’-TTAGGG-3’という6塩基が数百個繰り返して10kb以上の配列を形成している。
テロメアは染色体の安定に重要な役割を担っており、テロメラーゼを通常有さない体細胞では、細胞分裂に伴うDNA複製によりテロメア長が短縮し、限界まで短縮すると細胞が死にいたる。

●天然保湿因子 natural moisturizing factor (NMF)
NMFはケラトヒアリン顆粒に由来するフィラグリンが、角層内の蛋白分解酵素により分解されてできたもので、正常な角層でも水分と結合する。

●転写因子 transcriptional factor
DNAを鋳型としてRNAを合成する過程を転写と呼び、DNA上の特定の塩基配列を認識して結合し、転写を制御する核内蛋白を転写因子という。
真核生物における転写因子は、プロモーターと呼ばれる特定の領域に結合してRNAポリメラーゼを誘導し、転写の開始と基本量を決定する基本転写因子と、プロモーターの上流に位置する10塩基前後の様々な特異的塩基配列を認識・結合し、プロモーター活性を調節する転写調節因子に分けられる。

●トキシックショック症候群 toxic shock syndrome(TSS)
血圧低下、多臓器障害、猩紅熱様紅斑と落屑を主徴とする黄色ブドウ球菌による感染症。
1978年よりアメリカを中心にタンポンを使用した成人女性の症例が多数報告された。
病因が黄色ブドウ球菌の産生するトキシックショック症候群毒素-1(TSST-1)であることが証明されたが、TSST-1非産生菌でもTSSを発症しており、これらの群ではエンテロトキシンA,B,Cが検出。
症状は咽頭痛、頭痛、筋痛を伴い、高熱、嘔吐、下痢で発症する。さらに鼻咽頭や結膜の充血を伴うび慢性紅斑が24時間以内にみられ、点状出血は3~4日後、落屑は7~10日後にみられることが多い。
重症例は意識障害を認め、ショックやDICによる死亡例もあるが、致死率は5%以下である。

●ドラッグ・デリバリー・システム drug delivery system (DDS)
治療目的に合わせて原薬物が備えている活性を有効に発現させるために、安全性や使用性などに配慮して錠形や適用方法などに改良を加えた薬剤の投与システム。
放出制御型送達システム、吸収過程の制御、標的指向の工夫等。

●トラフレベル trough level 次回投与直前のシクロスポリンAの血中濃度。原則的には最終内服後10-14時間で測定するのがよいとされる。
投与開始後まず1~2週で行い、その後は月1回の測定。250ng/mlを超えないように注意することが肝要である。
しかし100ng/ml以下の濃度では十分な臨床効果が得られないことが多い。

●トランスグルタミナーゼ transglutaminase
終末角化に際してアミノ酸側鎖を架橋する酵素。
この酵素はカルシウム依存性で、ペプチド間を?(γグルタミン)リジン結合で架橋する反応を触媒する。
表皮角化細胞の終末角化の過程で、ロリクリン、インボルクリン、シスタチンα、スモールプロリンリッチ蛋白(SPRR)などの角化関連蛋白を架橋する。
遺伝性角化異常症の一つである常染色体劣性葉状魚鱗癬においてトランスグルタミナーゼ1遺伝子の変異が報告されている。

●トランスジェニックマウス transgenic mouse
宿主DNAに対して、外来性DNAを挿入する捜査を行い作成したマウス。宿主DNAの外来性DNA挿入部は破壊される。

●トリプターゼ tryptase
(結合組型、粘膜型)肥満細胞由来の中性蛋白分解酵素。
肥満細胞にはみられるが、好塩基球にはみられないことから両者の鑑別に用いられる。
同様のプロテアーゼであるキマーゼは結合織型肥満細胞にのみ認められる。

●透析アミロイドーシス dialysis (related) amyloidosis
長期透析治療中患者において、骨・関節障害(手根管症候群、弾発指、関節痛と関節可動域制限)として発症する全身性アミロイド沈着症の一種。
腎で代謝されないβ2ミクログロブリンが体内に蓄積してアミロイド前駆物質となる。

●内服抗真菌薬 oral antifungal agents
経口抗真菌薬としてはグリセオフルビンがあったが、この薬剤は皮膚糸状菌にしか効果がない。
近年広範囲の抗菌スペクトルを有し、しかも内服可能なアゾール系抗真菌薬(フルコナゾール、イトラコナゾール)とアリルアミン系抗真菌薬テルビナフィンが登場した。

●ニューキノロン薬 new quinolone (NQNLs)
ナリジクス酸(NA)をプロトタイプとするキノロン系薬は、細菌のDNA gyraseを抑制することにより、その抗菌作用を発揮し、Puedomonas属を除く各種グラム陰性菌に活性を示す。
副作用としては光線過敏症があり、光毒性物質としての性格と同時に蛋白との光結合能を有し、光ハプテンとして光アレルギー反応も起こす。

●ニューマクロライド薬 new macrolides
マクロライド系薬は巨大環状ラクトンを有し、ラクトン環と糖とのグリコシド結合が特徴である。
微生物のリボゾームに結合して、蛋白合成阻害作用を示し、優れた組織移行と、一般細菌はもとよりマイコプラズマやクラミジアなど種々の病原体にも優れた抗菌作用を有する。
ニューマクロライド薬はマクロライド系薬の改良で、体内動態の面で改良されている。

●ニューロペプチド neuropeptide
神経終末から分布されるペプチド群で、神経伝達物質としての作用だけでなく、種々の細胞の増殖や調節機構に関与している。
皮膚の知覚神経には、サブスタンスPやCGRPが存在する。またサブスタンスPやVIPは肥満細胞からヒスタミンを放出させ痒みを引き起こす。
CGRPはランゲルハンス細胞の抗原提示能を抑制するなども解明されている。

●日本紅斑熱 Japanese spotted fever
マダニを介して感染するとされる紅斑熱群リケッチア感染症の1つ。
病原体はRickettsia japonicaで、4~10月に好発し、臨床像はツツガムシ病に類似する。
虫刺の後7日前後の潜伏期間を経て悪寒発熱、関節痛、全身倦怠感などの感冒様症状が発症。
さらに数日後、全身に小紅斑~出血斑が出現するが発疹は四肢に強い。Weil-Felix反応はOX2が陽性。
診断は紅斑熱群リケッチアに対する特異的血清反応(酵素抗体法、蛍光抗体法)にてIgG、IgM抗体の上昇を確認する。テトラサイクリン系抗生剤が著効する。

●熱ショック蛋白 heat shock protein (HSP)
熱、紫外線、低酸素などのストレスに応答して、細胞はHSPと呼ばれる一群の蛋白の合成を誘導してその抵抗性を高める。
HSPは生物種を超えてよく保存されており、熱などにより変性した蛋白に結合して凝集を阻止し、再生を促進したり、未成熟な蛋白の細胞内輸送に際して凝集を防ぐなど分子シャペロンとして機能する。

●ノーザンブロッティング Northern blotting
特定のmRNAの発現量やサイズを解析する方法。

●ノックアウトマウス Knock-out mouse
遺伝子の相同組み換えを利用して単一の遺伝子のみ発現できないようにした(これをジーンターゲッティングという)マウス。

●膿疱性血管炎 pustular vasculitis
臨床的に無菌性膿疱と直下の皮膚血管炎の共存を主徴とする疾患群の総称。
一部のBehcet病や関節リウマチ、急性汎発性膿疱性細菌疹、腸バイパス症候群、淋菌性敗血症などの好中球性皮膚疾患が含まれる。

●バイオフィルム biofilm
生体組織や異物に付着した細菌は、生息条件が悪くなるとグリコカリックスと呼ばれる多糖体を主成分とする物質を産生する。
菌はグリコカリックスに取り囲まれて分裂・増殖し、隣接する菌と互いに接着して、付着対象物の表面を被覆する。
この状態は微生物による膜様物質となり、バイオフィルムと呼ばれている。
バイオフィルム内の細菌の周囲のグリコカリックスにより、抗菌薬や食細胞などの攻撃から守られており、組織に刺激を与えることなく生息圏が保持されている。
慢性膿皮症の瘻孔内、褥瘡の壊死組織内、アトピー性皮膚炎の角層内にもバイオフィルムが観察されている。

●ハプテン hapten
分子量1000以下の低分子物質で、抗原決定基は有するが、それ自身では免疫原性はもたない。
免疫原性をもつためにはキャリア(担体)と結合し、完全抗原となることが必要である。
抗体産生においては、ハプテン部分はB細胞に、キャリア部分がヘルパーT細胞に認識されることによるT細胞・B細胞相互作用が必要である。
皮膚に外用することにより、強力に感作を起こす接触原の2,4-ジニトロクロロベンゼンは代表的なハプテンで、ほとんどが表皮細胞表面の蛋白質に結合することにより、免疫原性を発揮する。

●バリア機能 barrier function
角層がバリアの役目を果たす。
角層細胞と細胞間脂質からなり、細胞間脂質は表皮角化細胞の層板顆粒から放出されるセラミド、コレステロール、脂肪酸からなり、水と脂質のラメら構造を成す。

●白色萎縮症 atrophie branche
毛細血管拡張の点在する色素沈着に囲まれた平滑で、象牙色あるいは白色硬化局面。女性に多く、下腿、足背にみられる。
静脈不全の一症状として生じ、SLE、強皮症、クリオグロブリン血症などの疾患にみられるが、リベド―血管炎と同義で使われることが多い。
本症の場合、網状皮斑と共に生じ、30%は夏期に潰瘍化する。循環障害による毛細血管内圧の上昇が発症に関与するといわれている。
病理組織学的にはsegmental hyalinizying vasculitisの像を呈する。難治で慢性に経過するが、DDSやペントキシフィリンが有効のこともある。

●花むしろ状配列 storiform pattern
隆起性皮膚線維肉腫、悪性線維性組織球腫、皮膚線維腫を特徴づける。
一方、線維肉腫では腫瘍細胞が並列に増殖し、矢羽根に似た構築をちり、herring-bone pattern(矢筈(やはず)模様)といい、渦巻き状の花むしろ状配列とは区別する。

●ヒアルロン酸 hyaluronic acid
生化学的な定義はN-アセチルグルコサミンとグルクロン酸よりなる2糖単位の繰り返し構造を有するプロテオグリカン(酸性ムコ多糖類)の一種。
酸性ムコ多糖類のなかでは唯一蛋白と結合していないため、厳密にはプロテオグリカンとはいえない。

●ビダラビン vidarabine
本剤は抗ウイルス薬の1つで商品名はアラセナA。
核酸塩基アデニンのアナログで、細胞由来のチミジンキナーゼによってリン酸化され、ウイルスのDNA依存DNAポリメラーゼを強力に阻害することによりウイルスDNAの合成を抑制する。
単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、アデノウイルス、B型肝炎ウイルス、ポックスウイルスなどのDNAウイルスに対して抗ウイルス作用がある。

●ヒトアジュバント病 human adjuvant disease
美容外科で用いられるシリコン、パラフィンなどの化学物質により惹起された膠原病の病態。
半数は強皮症の病態。10年以上経て発症することが多い。

●ヒトパピローマウイルス human papillomavirus
ヒトに感染する代表的なDNA腫瘍ウイルス。粒子は直径約55nmで正20面体の球状を呈する。
中には約8000塩基対の環状2本鎖DNAを入れる。遺伝子の塩基配列の相同性をもとに型分類されており、80を超える型がある。
尋常性疣贅は2、27、57型
青年性扁平疣贅は3、10型
尖圭コンジロームは6、11型
ボーエン様丘疹症は16、18型
疣贅状表皮発育異常症は5、8型
ミルメシアは1型
これらのうち、ボーエン様丘疹症の16、18型、疣贅状表皮発育異常症の5、8型は悪性化のリスクがあるいわゆる癌ウイルスと考えられている。

●ヒトパルボウイルスB19 human palvovirus B19
1本鎖DNAウイルスで骨髄の赤芽球系の幼若な前期細胞から後期赤芽球に感染する。
伝染性紅斑(リンゴ病)の原因ウイルスである。
これは学童期に好発し、潜伏期間10~19日(B19だから)、発熱はほとんどなく、初めに両頬に平手打ち様紅斑が生じ、2、3日後に四肢にレース状紅斑が生じ、7日ほどで自然消退する。
このウイルスは溶血性貧血患者に急性赤芽球癆を生じ、免疫不全患者における慢性骨髄不全、成人の多発性関節炎、妊娠中の感染で胎児水腫を起こすなど種々の疾患の原因となる。

●ヒトヘルペスウイルス6、ヒトヘルペスウイルス7 human herpesvirus 6, 7
ともにヒトに感染するβヘルペスウイルスである。
HHV-6にはA,Bの2つのサブタイプがあり、主として、HHV-6Bが初感染時に突発性発疹を起こし、その後生涯にわたり、潜伏感染を続ける。
免疫不全状態の際に再活性化し、肝炎、脳炎などを起こすことがある。健常人では一部の薬疹でその関与が指摘されている。
HHV-7はHHV-6よりやや遅れて感染し、一部の感染者に突発性発疹を起こす。やはりその後潜伏感染する。

●ヒトヘルペスウイルス8 human herpesvirus 8
Kaposi肉腫組織より発見されたヒトに感染するγヘルペスウイルス。
カポジ肉腫ほかAIDS患者に発生する特殊なリンパ腫であるBCBLの組織でもウイルスDNAが高頻度に検出される。
近縁のγヘルペスであるEBウイルスのように細胞の不死化、腫瘍化にかかわる可能性がある。

●ピリミジン二量体 pyrimidine dymer
ヒトの細胞に紫外線が照射されると細胞DNAに損傷が生じるが、その代表的なものが、隣接したピリミジン塩基間に生じるピリミジン二量体と(6-4)光産物である紫外線によるDNAの化学変化は塩基の共役二重結合への光子の吸収が原因となり、塩基の電子的励起の結果ピリピジン二量体が生じる。
ピリミジン二量体は正常人ならヌクレオチド除去修復により除去されるが、色素性乾皮症(XP)ではこの機構に欠陥があるためピリミジン二量体が多く残る。
ピリミジン二量体が修復されずにDNA中に残ると突然変異を生じ、細胞致死、発癌の原因となる。

●非定型抗酸菌症 atypical mycobacteriosis
本邦では熱帯魚や汚染水からMycobacterium marinumに感染する魚槽肉芽腫が最も多い。
一般には外傷部に無痛性の肉芽腫を形成し、時にリンパ管型の皮下硬結、膿瘍、小潰瘍がみられる。
皮膚感染症としては他に、M.fortuitum, M.avium(24時間風呂での感染例が増加 24時間風呂浴びる(avium)), M.chelonae, M.abscesus, M.kansasii, M.gordonaeなどがある。

●非淋菌性尿道炎 non-gonococcal urethritis
現在の尿道炎は、未治療時の膿性尿道分泌物は淋菌性、透明、漿液性は非淋菌性(大部分はクラミジア性)である。
本来、封入体結膜炎(トラコーマ)の病原体であったChlamydia trachomatis(CT)が非淋菌性尿道炎の主要な原因菌となり、その70%以上からCTが検出される。
CT性尿道炎では淋菌性と異なり尿道分泌物は少量、排尿痛は軽度である。パートナーの女性は症状が自覚されない場合が大多数である。

●微小管 microtubules
細胞骨格の1つで、細胞分裂時に紡錘糸を作ることで知られている。
αチュブリン、βチュブリンからなるダイマーが縦に並んで、プロトフィラメントを作り、これが13本管状に並んで、プロトフィラメントを作る。
微小管の上をレールとしてマイナス端からプラス側に走るキネシン、その逆に走るダイニンがモーター蛋白として細胞内物質移送系として知られている。

●光免疫学 photoimmunology
免疫系に及ぼす紫外線の影響を研究する分野。
歴史的には紫外線照射による特異的サプレッサーT細胞の誘導が腫瘍排除機構の抑制、感作の不成立を起こすことが知られている。
紫外線がヒトの免疫に及ぼす主な影響は、①皮膚のランゲルハンス細胞の減少、②ナチュラルキラー細胞の減少、③ヘルパーT細胞の減少、④サプレッサーT細胞の誘導、⑤抗体産生の低下などが挙げられる。
表皮細胞にあけるUVB誘導IL-10も免疫抑制の一役を担う。
角質層に存在するウロカニン酸はcis型に変換された後、ランゲルハンス細胞、TNFα誘導を介してその機能を抑制する。
光免疫抑制は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触過敏、乾癬の治療に役立つが、HSV、結核菌などの感染性皮膚疾患を助長する。

●光老化 photoaging
臨床的特徴は、しわ、項部菱形皮膚、皮膚の弛緩、老人性面疱(Favre-Racouchot症候群)、色素性病変(老人性色素斑、脂漏性角化症)、皮膚腫瘍(ケラトアカントーマ、日光角化症、基底細胞癌、有棘細胞癌、悪性黒子黒色腫)など。
組織学的には表皮・真皮の肥厚、日光弾力線維症、新生コラーゲン、メラノサイトの増加。

●フェリチン ferritin
生体内において鉄を貯蔵する役割を担っている分子量45万の球状蛋白である。肝・脾・胎盤などで産生される。
鉄貯蔵、鉄代謝の指標として、潜在的鉄欠乏状態で低値、再生不良性貧血、鉄芽球性貧血、溶血性貧血といった各種血液疾患、白血病、骨髄腫などの造血腫瘍で高値を示し、肝臓、膵癌、肺癌、泌尿器系癌などでも高値を示すことが多く、腫瘍マーカーとしても有用である。
皮膚科領域では成人Still病の診断にフェリチン値の上昇は重要とされている。

●フリーラジカル free radical
不対電子をもつ原始や分子をフリーラジカルと呼ぶ。
活性酸素種ではスーパーオキサイドO2-やヒドロキシラジカルOHが不対電子をもち、フリーラジカルに属する。
不安定で、他の分子から電子を引き抜く性質が強い(高い抗酸化能)。脂質の過酸化、蛋白質の変性、酸素の失活、核酸DNAの障害を通して皮膚炎、発癌老化などの組織障害を起こす。

●プリオン病 prion disease
ヒトのCreutzfeldt-Jakob病(CJD)、クールー病等は中枢神経を侵し、亜急性に進行する致死性疾患であり、その罹患能は海面状を呈する。
脳内に沈着が認められる異常型プリオン蛋白が病原体であるという仮説が有力。
感染から10~15年の潜伏期間の後に記憶力の低下や錯乱状態、歩行失調などで初発する。

●プロテオグリカン proteoglycan
ヒアルロン酸以外の酸性ムコ多糖はすべて蛋白(コア蛋白)と複合体を形成しているため、酸性ムコ多糖は全てプロテオグリカンと呼ばれている。
皮膚に存在する主なプロテオグリカンはヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン4,6硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリンである。

●プロドラッグ prodrug
投与・吸収された後に代謝を受けて活性体となり、生体内で本来の薬理作用を発現するように開発された薬物。
代表例としてNSAIDsで現れやすい胃腸障害などの軽減を目的に開発されたアセメタシン(インドメサシンのプロドラッグ)などがある。

●プロリダーゼ欠損症 prolidase deficiency
皮膚症状は85%異常に認められ、慢性反復性下腿潰瘍、皮膚の脆弱性、紫斑、毛細血管拡張、日光過敏症などがみられる。
その他慢性反復性感染(中耳炎、副鼻腔炎)、知能低下、脾腫、特徴的顔貌、貧血、γグロブリン増加などが報告されている。
尿中に大量のイミノジペプチドの排泄を伴い、プロリダーゼ欠損によることが証明された。常染色体劣性遺伝。

●分泌型IgA secretory IgA
血清中のIgAの90%はモノマーであり、分泌液中の分泌型IgAの大部分はダイマーとして存在する。

●ペプチド療法 peptide therapy
感作源として抗原のエピトープに相当するペプチドを用いて抗体の産生やCTLの誘導を行う能動免疫療法。

●ヘリケース遺伝子 helicase gene
ヘリケースとは、内在するATPase活性によってエネルギーを得ながら、通常核酸の1本鎖の部分や、1本鎖と2本鎖の接合部に結合して一方向に移動し、DNA-DNAやDNA-RNAの2本鎖構造あるいはRNAの二次構造を水素結合を切断することにより解きほぐして1本鎖にする蛋白であり、DNAの複製、修復、組み換え、転写、翻訳、スプライシングなど、幅広く関わっている。

●ペルオキシゾーム病 peroxisome disease
ペルオキシゾームは成熟赤血球以外の細胞に存在する細胞内小器官で、オキシダーゼなどの酵素が存在する。
これらの酵素は脂肪酸のβ酸化、エーテルリン脂質、胆汁酸生合成など、多彩な機能を営んでいる。
ペルオキシゾーム病はペルオキシゾーム欠損症、ペルオキシゾームは存在するが、複数の代謝異常を来たす疾患。単独酵素欠損症に大別される。
疾患の多くは脳神経症状を主体とし、乳児期までに死亡する例が多い。
皮膚症状としては点状骨端異形成の近節短縮型とX連鎖優性遺伝型が魚鱗癬様皮膚変化をきたす。

●マラセチア毛包(毛?)炎 Malassezia folliculitis
生毛を抜いてパーカーインク加KOHにて直接鏡検すると、毛の周囲に青く染まる胞子が多数みられる。
これらの胞子は球状を呈するPityrosporum orbisulare、卵型~楕円状を呈するPityrosporum ovaleからなる。両菌は同一の菌種でMalassezia furfurの酵母型と考えられている。
毛包を中心に生検を行い、PAS染色ないしグロコット染色を行い検索すると毛包内に胞子塊が認められる。

●慢性光線過敏性皮膚炎 chronic actinic dermatitis(CAD)
原因不明で慢性・持続性の獲得性光線過敏症を包括する診断名。
中高年男性のおもに露光部に好発する慢性湿疹性病変で、UVBを中心とした広範囲の作用波長領域に高度の遷延型光アレルギー反応を示す。
光感作源を積極的に追求したうえで、原因が明らかでない場合にのみ用いるべき診断名。

●ミゾリピン mizoribine
免疫抑制薬の一種で、主としてプリン合成を抑制する代謝拮抗薬。主にSLEの腎症に対して用いられる。
効果発現までに1~2カ月かかることを念頭において、開始時期を決定する。他に関節リウマチにも用いられる。重篤な副作用は少ない。
効果発現が緩やかで、著効ではないが、有効率は高く、免疫抑制剤の中では使用しやすい。

●ミノキシジル minoxidil
本剤は強力な降圧薬で、他の薬剤に抵抗性の高血圧患者に用いられていた。
血圧降下は投与後すぐに起こらず、主として肝臓内でミノキシジルサルフェイトに代わり、これが強力な血管拡張作用をもたらす。

●ミノサイクリン minocycline
テトラサイクリン系抗生物質。副作用が少なく、白血球機能抑制や活性酸素抑制などの抗炎症作用も期待される。

●ミルメシア myrmecia
ウイルス性疣贅の一種で、HPV1型の感染。角化性の丘疹で中央がクレーター状に陥凹しているのが特徴。
しばしば紅暈を有し、圧痛を伴う。凍結療法などの治療に抵抗するが、自然治癒もしばしばみられる。
組織学的に細胞質内に好酸性の封入体がみられるのが特徴である。

●メラニン melanin
メラノサイト内に存在するメラノソームで産生される色素で、チロシンの代謝産物よりなる巨大ヘテロポリマーである。
メラニンには黒色または褐色のユーメラニン(真正メラニン)と、黄色または赤色のフェオメラニン(黄色メラニン)とがある。
ヒトを含む多くの哺乳動物では、両メラニンは同じメラノサイトの中で様々な割合で子剤して生成され、混合メラニンと呼ばれる複合体を形成する。
その生成は、チロシンからドーパ、更にドーパキノンまでの代謝過程は共通で、チロジナーゼの存在下になされる。
その後2つの生成経路に分かれる。システインやグルタチオンの存在下ではフェオメラニンが生成され、非存在下ではユーメラニンが形成される。

●免疫ブロット法 immunoblotting
特定の抗体が反応する抗原蛋白の同定に頻用される生化学的手技で、蛋白を電気泳動後ニトロセルロース膜に転写し、抗体の反応する蛋白バンドを酵素化学的ないし化学発光法により検出する。
皮膚科領域では自己免疫性水疱症の抗原物質の同定に有用である。
尋常性天疱瘡血清が130kD抗原(デスモグレイン3)と落葉状天疱瘡が160kD抗原(デスモグレイン1)、水疱性類天疱瘡血清が230kD抗原(BP230)および180kD抗原(BP180)と反応し、後天性表皮水疱症血清が290kD抗原(Ⅶ型コラーゲン)と反応する。

●網膜剥離 retinodialysis
アトピー性皮膚炎軽症では1%、中等症以上では8%と報告されている。
両眼に発症することが多く、裂孔部位は上耳側に多い。
通常外傷性の網膜剥離は上鼻側に裂孔ができることが多いが、ADで上耳側に多いのは眼球を耳側から擦るためとしている。

●抑制波長 inhibition spectrum
日光蕁麻疹の発症を抑制する太陽光線中の波長のこと。
日光蕁麻疹の誘発テストにおいて、作用波長(原因となる波長)を患者皮膚に照射すると即時型の紅斑・膨疹が誘発される。
作用波長の照射直後に作用波長以外の光線を追加照射すると、作用波長による皮疹誘発が遷延する。

●らい予防法
1953年に制定。1996年4月1日「らい予防法廃止に関する法律」が施行。現在はハンセン病と改められる。

●リコンビナント蛋白 recombinant protein
ある蛋白をコードするcDNAを各種の発現ベクターに取り込み、大腸菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞にトランスエフェクトして産生させた蛋白。
各種ホルモン、サイトカイン等のリコンビナント蛋白が治療として用いられる。

●リバウンド現象 rebound phenomenon
一般的にある刺激を与えて作用させた刺激を止めたときに生じる、刺激中とは全く逆の反応を指す。
酒さ様皮膚炎ではステロイド外用中止で急性増悪をみることが良く知られているが、これも一種のリバウンド現象と考えられる。

●ループスバンドテスト lupus band test
LE患者皮膚を生検して、主に蛍光抗体法により真皮表皮境界部に免疫グロブリンや補体の沈着の有無をみる検査法。
SLEとDLEの紅斑部ではそれぞれ90%以上と60%以上の陽性率。SLEの無疹部でも50~60%の陽性率があり、極めて診断価値が高い。

●レーザー laser
血管腫には色素レーザー照射が、また色素病変にはQスイッチレーザー照射が第一選択となっている。
レーザー光線により脱毛も可能になったが、表皮にメラニンが多く存在する日本人は白人より瘢痕を来たしやすいことを念頭に置く必要がある。

●レチノイド retinoid
ビタミンA誘導体。本邦ではエトレチナートが用いられる。
対象疾患としては魚鱗癬、掌蹠角化症などの先天性角化異常、白板症、乾癬。体重1kg当たり1mg程度の内服を開始し、効果の出現をまって、徐々に減量する。
作用機所は角化の抑制。また角質細胞の接着性も低下させる。最も重要な副作用は胎児への催奇形性。
女性は投与中止後2年間、男性は中止後6カ月の避妊が要求される。
このほか幼小児における骨形成障害や成人での骨棘形成、肝機能障害、血中脂質の上昇がある。

●レトロウイルス retrovirus
逆転写酵素によってviral DNAとなって宿主細胞の染色体に取り込まれ(integration)、プロウイルスとして存在するRNAウイルスで、ヒトではHIVやHTLV-1などが病原性をもつ。
HIVはレンチウイルスに属し、AIDSを発症させるウイルスである。
生体内ではHTLV-1がT細胞の増殖を促進するのに対し、HIVは細胞融解性に働き多数のウイルス粒子を複製する点で異なる。

●ロイコトリエン leukotriene (LT)
アラキドン酸カスケードにおいて、5-リポキシゲナーゼ系の主要生成物であり、種々の薬理作用を示す。
構造内部にペプチドをもつシステイニルロイコトリエンと、ペプチドをもたないロイコトリエンB4(LTB4) とがある。
LTB4は強力な白血球遊走作用と白血球活性化因子を有している。
システイニルロイコトリエンは血管透過性の亢進、気管支平滑筋収縮作用などの機能をもっており、種々のアレルギー性炎症に関与しているとされる。

皮膚病変のカルテ記載

1、紅斑(erythema)
血管拡張・充血による皮膚の可逆性の赤い斑を紅斑といいます。
血管拡張の原因として、炎症・感染・温熱・感情がある。紅斑は時間とともに変化します。

2.紫斑(purpura)
真皮または皮下組織内の出血により紫色を呈する斑で、硝子圧で退色しない.小さいものを点状出血(petechia)、皮下組織にも出血して大きいものを斑状出血(ecchymosis)といいます。
紫斑の色調も時間とともに変化します。
はじめ浅い紫斑(点状出血)は鮮紅色、深い斑状出血は赤紫色であるが、次第に褐色→黄色となって消退します。
繰り返しおこるとヘモジデリンが沈着して、茶褐色色素沈着となります。

3.白斑(leukoderma)
色素脱失または局所性貧血による白色の斑です。
メラニンを産生しているメラノサイトの異常によって皮膚の色が白くなる状態が色素脱失、局所的に血管がれん縮・寒冷・感情などによって収縮した状態が貧血性の白斑です。
ある発疹の周囲を取り巻く白斑を白うんといい、色素脱失であればSutton現象とよびます。

4.色素斑(pigmented spot)
皮膚色よりも濃い色になって褐色、黒褐色、紫灰色、青色などを呈するもので、メラニンによるものが大部分であるが、他にヘモジデリン、カロチン、胆汁など体内性のものと、異物性のもの(鉛筆の芯、砂など)によってもおこります。

5.丘疹(papule)
 隆起性病変で、直径は通常10mm未満です。

6.膨疹(wheal)
 皮膚の限局性の浮腫で、境界明瞭な扁平隆起を呈します。
多くは痒みを伴い、短時間で消失します。
大きさは虫刺され様の小さいものから、遠心性に拡大し、融合して巨大な地図状になるものまでさまざまです。
じんま疹、虫刺症など.

7.水疱(bulla)、小水庖(vesicle)
小水疱は透明な液体で満たされた小型の水疱で、直径は10mm未満です。
小水疱はヘルペス感染、急性アレルギー性接触皮膚炎、ある種の自己免疫性水疱性疾患(例、疱疹状皮膚炎)の特徴です。
水疱は透明な液体で満たされた水ぶくれで、直径は10mmを超えます。
水疱は熱傷、虫刺症、刺激性またはアレルギー性接触皮膚炎、薬疹で生じることがあります。
古典的な水疱性疾患には、尋常性天疱瘡および水疱性類天疱瘡がある。

8.膿庖(pustule)
膿疱は膿を含んだ隆起性病変です。膿疱はふつう細菌感染、毛包炎でみられますが、膿疱性乾癬を含め一部の炎症性疾患でも生じることがあります。

9.結節(nodule)
丘疹より大きい(Icm以上)限局性隆起をいいます。
小さくて丘疹との移行に近いものを小結節、はるかに大きく増殖傾向の強いものを腫瘤・腫瘍(tumor)と表現します。
結節は表皮ないし真皮の腫瘍性変化、肉芽腫性炎症および沈着症を意味します。
したがって、単に大きさだけで丘疹と区別しているわけではなく直径1cm以下の小さいものでも、腫瘍性の性格があれば小結節といいます。

11.膿瘍(abscess)
真皮または皮下に膿(pus)の貯留したもので、波動を触れます。

12.びらん(erosion)
表皮が基底層まで剥離欠損したものです。
水疱が破れた後、皮膚が擦れた後に生じます。

13.表皮剥離(excoriation)
掻破、外傷などにより表皮の小欠損をきたしたものです。

14.潰瘍(ulcer)
真皮または皮下組織に及ぶ皮膚欠損で、底面に出血・漿液滲出・膿があり、しばしば膿苔、痂皮が付着します。

15.瘢痕(scar)
瘢痕は、皮膚が損傷を受けた後に線維化を生じて正常皮膚と置き換わった部分です。一部の瘢痕は肥厚、すなわち厚さを増して隆起します。
ケロイドはもともとの創縁を越えて拡大する肥厚性瘢痕です。

16.萎縮(atrophy)
萎縮は皮膚の菲薄化であり、乾燥して皺が寄った外観を呈します。
萎縮は、慢性的な日光暴露、加齢、ある種の炎症性および/または腫瘍性皮膚疾患で生じ、その例として皮膚T細胞リンパ腫およびエリテマトーデスがあります。
萎縮は、長期間強力なステロイドを外用しても生じることがあります。

17.鱗屑(scale)
鱗屑は角層上皮が厚く堆積したもので、乾癬、脂漏性皮膚炎、真菌感染などの疾患でみられます。
ばら色粃糠疹およびいかなるタイプでも慢性皮膚炎は、鱗屑を伴うことがあります。

18.痂皮(crust)
漿液、膿、壊死塊などが乾固したもので、びらん、潰瘍などを覆う、血液の乾固したものを血痂といいます。いわゆる「かさぶた」のことです。
痂皮の形成される現象のことを結痂といいます。

19.角質増生(hyperkeratosis)
角質の形成が著しく増加または促進している状態で、表皮細胞の増殖を伴うため皮膚は厚く触れ、表面は白~灰色を呈します。
おもに機械的刺激によって生じます。

20.苔癬(lichen)
ほぼ同じ大きさの小丘疹が多数集まり、長くその状態を持続し、他の皮疹に移行しないものです。次に述べる苔癬化とは異なります。

21.苔癬化(lichenification)
皮膚が慢性に浸潤して硬く触れ、厚くなった状態です。
アトピー性皮膚炎の慢性化した湿疹では、肘窩、膝窩、手首、足首などの関節部位にしばしば苔癬化がみられます。

22.亀裂(fissure)
表皮深層~真皮に達する細く深い線状の切れ目.ひび割れです。

23.毛細血管拡張(telangiectasia)
真皮上層の毛細血管が持続的に拡張、延長ないし蛇行している状態をいいます。

24.紅皮症(erythroderma)
全身の潮紅が持続するもので、しばしば落屑と浸潤を伴います。


その他の臨床的徴候
○紅色皮膚描記症
皮膚を擦った後、皮膚を擦った通りに出現するじんま疹様の膨疹です。
正常人の5%までがこの徴候を示すことがあり、これは物理的じんま疹の一型です。

○ダリエ徴候
病変を擦ったときに、その部分が膨れる現象である。この徴候は色素性じんま疹すなわち肥満細胞症の患者で生じます。

○ニコルスキー徴候
中毒性表皮壊死剥離症およびある種の自己免疫性水疱性疾患の患者で皮膚を優しくずらすように圧迫するときに生じる表皮の剥離です。

○アウスピッツ徴候
乾癬の局面から鱗屑を剥がした後に点状の出血を生じる現象です。

○ケブネル現象
外傷(例、引っかく、擦る、損傷)を受けた部位に病変が生じる現象のことである。
乾癬は高頻度にこの現象を示すが、扁平苔癬でもこの現象を示すことがあります。



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