私自身幼少時から重症アトピー性皮膚炎で苦しんでおり、幼少時から医者になるまで皮膚科、小児科の先生の御世話になりっぱなしでした。
現在はその面影を指摘されませんし、患者様にお伝えするとびっくりされますが、目の周りの色素沈着等は未だに残っております(治療によりだいぶ改善しましたが‥)。
幼少時の頃から、いつか同様の症状で苦しんでいる方のために働きたいと思い、小学校の卒業アルバムには将来の夢で『皮ふ科医』と記載しております。
以上、アトピー性皮膚炎は特に思い入れのある疾患で、当院は治験審査委員会を通り、中等症から重症のアトピー性皮膚炎成人患者に対するDUPILUMABの有効性・安全性を治験する全国30施設のうち1施設に選ばれております。
この治療は今までのアトピー性皮膚炎の治療と全く異なります。
海外に続き日本でも治療が始まれば、日本のアトピー性皮膚炎で悩んでいる患者様に新たな治療を提供でき、皮膚科学の発展・貢献につながると信じております。
またRejeneron社が行うアトピー性皮膚炎患者様に対する国際的な評価しシステム、トレーニングプログラムを研修する等日々知識のアップデートに取り組んでいます。
アトピー性皮膚炎は表皮、なかでも角層の異常に起因する皮膚の乾燥とバリアー機能異常を伴い、多彩な刺激反応及び、アレルギー反応が関与して生じます。
慢性に経過する炎症とかゆみをその病態とし、患者様の多くはアトピー素因を持ちます。
日本皮膚科学会の診断基準は、上記3つ全て当てはまるものをいいます。
家族歴、既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患)IgE 抗体を産生しやすい素因などをいいます。
また、適切な治療で多くの場合が小児期に治癒することも多く、成人の場合も適切な治療により症状がコントロールされた状態に維持されると、自然寛解も期待される疾患であるため、いかに皮膚症状を良い状態を維持するかが重要です。
ただし患者様によっては成人になっても症状が続いたり、成人になってから発症することもあり、良い状態で経過をみていく必要性があります。
最近、アトピー性皮膚炎の方の多くが、遺伝的に皮膚の保湿因子の遺伝子異常があることがわかり、保湿の重要性が再認識されてきています。
様々な症状を呈しますが、いずれも慢性に経過するのが特徴です。
アトピー性皮膚炎の症状例①
アトピー性皮膚炎の症状例②
皮膚がいまだ脆弱であり、乳児湿疹や乳児脂漏性皮膚炎等さまざまな皮膚のトラブルが見られるため、容易にアトピー性皮膚炎と診断するのは避けたほうが良いです。
独特の乾いた皮膚であるatopic dry skinや、おむつの当たる箇所はかえって湿疹が少ないなどの特徴があります。
口のまわり、頬(ほお)、頭にジクジクした湿疹を生じることが多く、卵、牛乳、大豆などに対するアレルギーもときに関係していますが、食事制限のみではよくなりません。
肘や膝など関節の内側を中心に湿疹がみられ、耳介の下部が裂けるような症状(耳切れ)を呈します。
食物アレルギーが関与している場合があります(ただし、特定のものを食べて症状が悪化することが明らかな場合は、避けたほうがいいでしょう)。
肘(ひじ)や膝(ひざ)の内側などに、様々な外的刺激が加わって湿疹ができ、乾燥症状もはっきりしてきます。
成人の場合食物アレルギーが関与していることはほとんどありません。
児童期の湿潤型の皮疹と異なり、思春期以降は乾燥型の皮膚炎を起こすことが多く、広範囲にわたり乾いた慢性湿疹の症状を呈します。
頭皮に大量のフケが出るケースが多いです。
また眉毛の外側が薄くなる「ヘルトゲ徴候」、発赤した皮膚をなぞると、しばらくしてなぞったあとが白くなる「白色皮膚描記症」
慢性化すると、鳥肌だったようにザラザラしたものができ、皮膚が次第に厚くなる「苔癬化」、しこりのあるイボ状の皮疹である「結節性痒疹」
手指に症状が表れ易くなり、爪元から第二関節あたりが特に酷く荒れやすい「アトピックハンド」、等特徴のある所見がみられます。
保湿は重要です。冬だけでなく、毎日保湿することで予防することもできますのでしっかりケアしましょう。
高純度のワセリンでありプロペト、ヘパリン類似物質を含む保湿軟膏・保湿ローション類(ビーソフテンローション・ヒルドイドローション・ヒルドイドソフト軟膏)
尿素を含有するウレパールなども処方します。
皮膚炎に対して、まずは免疫調節軟膏(プロトピック軟膏)または副腎皮質ホルモン軟膏(ステロイド軟膏)を外用します。
副腎皮質ホルモン軟膏にはさまざまな強さのものがあり、皮膚炎の程度や部位に応じて最適なものを選択します。
当院では不必要なステロイド外用剤は使いませんが、メリットがデメリットを上回ると判断した場合は患者様に説明の上、処方しております。
アトピー性皮膚炎のお薬で、ステロイドではありませんがステロイドと同様に赤みや炎症を抑える作用が入っているお薬です。
ステロイドとは違い、長期的に外用しても皮膚を薄くしたり、毛細血管拡張の副作用がないお薬で予防として長期的に外用できます。
外用方法によって効果も変わりますので、過去や現在効果が乏しい方は外用方法を見直してみてもよいかもしれません。
※ プロトピックの外用方法などについては プロトピック軟膏説明ページ をご参照ください。
ステロイド外用剤・プロトピック軟膏などの抗炎症外用薬を一定期間投与しても、充分な効果が得られない場合は、デュピクセントを処方することもあります。
従来の治療では、皮膚のバリア機能が低下したり、炎症反応が促進した部分を塗り薬や内服薬で抑えているのみでしたが、デュピクセントは、炎症を引き起こす仕組みを根本からブロックするお薬です。
これまでとは全く異なる、アトピー性皮膚炎に対する画期的な治療薬と言えます。
デュピクセントの適応
※ デュピクセントの投与方法・医療費助成制度などについては デュピクセント説明ページ をご参照ください。
就寝中は副交感神経が優位になるため痒みの程度が強くなります。
このため寝ている間に皮膚炎を掻き壊して悪化させてしまいます。
これを防ぐために抗アレルギー剤(かゆみ止め)を内服します。この薬には皮膚炎を抑える効果もあります。
抗アレルギー剤にはほとんど副作用はありませんが、人によっては昼間に眠くなることがあり、その場合は抗アレルギー剤の種類を変えて自分に最適なものをみつけます。
IgEが高値の患者様にはIPDカプセルが効果があることもあります。
その他、漢方薬の併用、成人の重症例・難治例では免疫抑制剤であるシクロスポリン、(ネオーラル)内服や紫外線療法が必要となることがあります。
アトピー性皮膚炎では、日本で一般的に行われているアレルギー検査は即時型のIgE抗体を検査しますが、遅延型のIgG抗体とIgA抗体も調べることが出来、この3つの抗体には相関関係が無いため、それぞれを検査することにより、異なる反応が得られる場合があります。
IgG食物アレルギー検査により、従来の血液検査では見いだせなかった食物アレルギーを発見し、アトピー性皮膚炎の増悪因子を取り除くことでコントロールしやすくします。
乳幼児の場合、食物アレルギーが悪化要因となっていることも多く、その検索のために、採血及びプリックテストを行い原因検索を行います。
乳幼児の血液検査・食物除去試験・食物負荷試験などが必要と考えられる場合は日本赤十字社医療センター、北里研究所、国立病院機構相模原病院とも連携し治療にあたります。
炎症を抑え、赤み、かゆみを抑える作用があります。
①皮膚が薄くなってくる ②毛細血管拡張といって少し赤みを帯びてくる ③ニキビやおできができやくすくなる
といった副作用があります。
この上記の3つの副作用は気を付けなければならない副作用です。
※ よくネットで流れている その他の副作用 については ページ最後のQ&Aをご参照ください
①皮膚が薄くなってくる ②毛細血管拡張といって少し赤みを帯びてくる
→
長期的にダラダラと外用していると起こりやすくなります。その副作用がでやすい部位としては、顔や首などです。
顔や首の前面は他の部位に比べても皮膚が薄く副作用がでやすいので、長期的にステロイドをダラダラ続けるのは避けたいです。
当院では顔、首ではまず第一に皮膚萎縮、毛細血管拡張などの副作用の出にくいタクロリムス水和物軟膏(プロトピック軟膏)を使用します。
どうしてもタクロリムス製剤のチクチクとしたホテった感じが我慢できない方、かえってかゆくなるような方には局所の副作用の少ないステロイド外用剤を使います。
また、症状が強く、皮膚がごわごわした状態(苔癬化)や皮膚がしこり化している状態(痒疹)では皮膚を薄くする副作用がメリットになります。
③ ニキビやおできができやすくなる
→
ニキビやおできにはステロイドは避けるようにしましょう。
湿疹とニキビが併発している場合は、まずは湿疹の治療を優先します。(湿疹があるとニキビができやすくなるため)
ステロイド外用に加え、抗生剤の内服でニキビやおできに対応します。
Q1 | ステロイドを外用するとやめられなくなる? |
---|---|
A |
× 症状が改善すればステロイドをやめることができます。 軽い症状であれば短期間のステロイド外用で改善することもありますが、アトピー性皮膚炎の症状は長期症状が続くことが多いため症状が改善するまではステロイドの外用治療をお勧めします。 ステロイドを上手に使用し良い肌の状態を保ち続けることが大切です。 |
Q2 | ステロイドを外用するとリバウンドがおこる? |
A |
× 症状の悪化=リバウンドと思っている患者様は多くいますが、そればリバウンドとは言いません。 少しでも症状が改善すると、治ったと思い込みステロイドを急に塗らなくなったり、保湿を怠ったりすることが悪化する原因の一つだと考えらえます。 かゆみや赤みがなくなったとしても、肌のざらつきがある部分は軽い湿疹がくすぶっている状態であり、それは完全によくなったとはいえません。 正常な肌と同じ触り心地になるまで、薬は継続して塗りましょう。また、症状の状態によってステロイドのランクを弱くするなど主治医の先生と相談しステロイドを上手に使っていくのがコツです。 予防の為にも基本的には保湿を徹底しましょう。 |
Q3 | ステロイドを外用すると皮膚の色が黒くなってしまう? |
A |
× 皮膚が黒くなるのはステロイドの副作用にはありません。炎症が続くことによって皮膚の色素沈着がおこります。 症状の強さと期間の長さにより、色素沈着は起こりやすくなります。 例えば強い皮膚の炎症、やけどや怪我等症状の強さが強ければ痕が残りやすいですし、だらだらと湿疹や慢性的な刺激が長期的に続くのも色素沈着の原因となります。 色素沈着がおこらないようにするためには、一番はステロイドをしっかり外用し皮膚をよい状態に保ち続けることが必要不可欠です。 色素沈着を薄くするには時間がかかりますが、よい状態を保つことでゆっくりと改善していきます。 また、顔や首の色素沈着はプロトピック軟膏を長期外用していると薄くしていく作用があると言われているため、皮膚の状態が落ち着いたらステロイドから切り替えるのをお勧めします。 |
Q4 | ステロイドを使用すると白内障になる? |
A |
× アトピー性皮膚炎の患者様で白内障にかかる人はが多くいることから、以前はそういう風に噂されていました。 現在では、アトピー性皮膚炎の症状により強く目をこすったり、刺激を目に与えることで白内障になるリスクが上がるといわれています。 ステロイド外用剤のウソとホントより(鳥居薬品株式会社)一部抜粋 |
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