皮膚そう痒症
皮膚そう痒症とは、明らかな湿疹や発疹が見られないにもかかわらず、強いかゆみを感じる状態をいいます。かゆみは全身または部分的に現れ、日常生活や睡眠に支障をきたすこともあります。
特に高齢者に多く見られる疾患であり、加齢による皮膚の乾燥(皮脂や汗の分泌量の低下)が大きな要因とされています。しかし、原因は乾燥だけではなく、糖尿病・腎疾患・肝疾患・甲状腺機能異常などの内科的な病気が背景にある場合もあります。
また、ストレス・自律神経の乱れ・薬剤の影響などが関与しているケースもあり、さまざまな要因が複雑に関係しているのが特徴です。
皮膚そう痒症の原因
皮膚そう痒症は、さまざまな要因が複雑に関係して発症します。以下が代表的な原因です。
- 加齢による皮膚の乾燥
高齢になると皮膚の保湿機能が低下し、バリア機能が弱まることでかゆみが起こりやすくなります。
- 内科的疾患
糖尿病、慢性腎不全、肝疾患、甲状腺機能異常、貧血、悪性腫瘍などが背景にあることがあります。
- 薬剤性
降圧薬、利尿薬、鎮痛薬など、特定の薬による副作用でかゆみが出ることもあります。
- 精神的ストレスや自律神経の乱れ
ストレスや睡眠障害がかゆみを誘発・悪化させる場合もあります。
- 入浴や洗浄のしすぎ
熱すぎるお湯や過剰な洗浄で皮脂が失われ、かゆみを引き起こすことがあります。
皮膚そう痒症の症状
皮膚そう痒症は、見た目には皮膚にほとんど変化がないにもかかわらず、強いかゆみが続くというのが最大の特徴です。特に以下のような症状が見られます。
- 皮膚に目立つ湿疹や発疹がないのに、つらいかゆみが起こる
初期には見た目で異常がわかりにくいため、乾燥やストレスのせいだと思って放置されがちですが、かゆみだけが強く出るのがこの病気の特徴です。
- 入浴後や夜間にかゆみが悪化しやすい
お湯や石けんによって皮膚の保湿成分が失われたり、体温が上がったりすることでかゆみが強まります。寝入りばなや夜中に無意識に掻いてしまうこともあります。
- 肩・背中・腰・すねなど、乾燥しやすく掻きやすい部位に出やすい
皮脂の少ない部位に起こることが多く、高齢者では特に腰や下肢のかゆみを訴えるケースが目立ちます。
- 掻きむしりによって皮膚に傷・色素沈着・炎症が生じる
繰り返し掻くことで皮膚が傷つき、赤くなったり、黒ずんだり、かさぶたになるなど、二次的な皮膚トラブルが起こります。慢性化すると皮膚が厚く硬くなる「苔癬化(たいせんか)」と呼ばれる状態になることもあります。
- かゆみによって睡眠の質が低下したり、集中力が落ちるなど、生活への影響も大きい
かゆみはただの「不快感」ではなく、日常生活やメンタルにも影響するため、早めの対処が重要です。
皮膚そう痒症の治療
外用薬
皮膚の炎症やかゆみに応じて、ステロイド外用薬や保湿剤を処方します。乾燥が目立つ部位には、保湿剤を重点的に使用します。
内服薬
抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬でかゆみを抑えます。かゆみが強く夜眠れない場合は、鎮静作用のある薬を選ぶこともあります。
生活指導
入浴方法、スキンケアのコツ、衣類・寝具の選び方など、日常生活での工夫もご案内します。
原因となる疾患の検索
糖尿病や腎機能異常などが疑われる場合には、他科の医療機関と連携し、紹介状をお渡しのうえでスムーズな診療につなげています。
よくあるご質問(FAQ)
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なぜ発疹がないのにこんなにかゆいのですか?
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皮膚の表面に炎症が見えなくても、皮膚の内部や神経系にかゆみの原因があることがあります。乾燥による皮膚バリアの低下や、内科的な病気がかゆみを引き起こしているケースもあります。
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皮膚そう痒症は自然に治りますか?
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軽いものであれば改善することもありますが、放っておくと慢性化してさらに悪化することがあります。特に高齢の方は再発しやすいため、早めの受診と治療が大切です。
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入浴はしない方がいいですか?
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入浴そのものは問題ありませんが、熱すぎるお湯・長時間の入浴・ゴシゴシ洗いは避けた方がよいです。ぬるめのお湯で短時間にし、入浴後すぐに保湿を行うことが重要です。
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ステロイドの塗り薬は毎日使って大丈夫ですか?
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医師の指示に従って使用すれば問題ありません。強さや塗る期間は症状に応じて調整しますので、自己判断でやめたり続けたりせず、指示通りに使ってください。