痒みは皮膚の表層特有の感覚で、掻きたくなるような、あるいは掻かずにおられないような、そして実際に掻破行動を起こす人間にとって最も苦痛な感覚の一つです。
ときには痛み刺激よりもつらいとされ、血が出るまで掻破をしてしまうのはある意味、痒みの刺激を、痒みより辛くない痛み刺激にに切り替えている行為ともいえます。
種々の皮膚科の疾患のみならず内科系の皮膚症状としても発現します。
従って、痒みの発症機序は単純な単一機構のみでは説明がつかないと思われます。
湿疹など皮膚所見がある場合と有さない場合(皮膚そう痒症)にわけて考えます。
ほとんどの皮膚疾患は痒みを合併することが多いです。
代表的な疾患に蕁麻疹、アトピー性皮膚炎・乾皮症、虫刺症・疥癬などの感染症などの湿疹・皮膚炎群、痒疹、尋常性乾癬があげられます。
以下に代表例をまとめます。
湿疹・皮膚炎でも原因がはっきりしている場合は、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹などと診断します。
とくに下腿、側腹部を中心に冬季に悪化する皮膚の乾燥に伴う皮膚炎です。
年配者に頻度が増えてきます。
急性痒疹、亜急性痒疹、結節性痒疹、妊娠性痒疹などがあります。
そう痒の強い丘疹、小結節から慢性になると苔癬化を伴います。
接触皮膚炎は、アレルギー性接触皮膚炎と、一次刺激性接触皮膚炎に分類されます。
アレルギー性接触皮膚炎は初回接触では発症せず、感作成立後に同物質に再接触した場合に発症します。
接触皮膚炎の原因を推測するのはある意味皮膚科の醍醐味とも思われます。
境界明瞭な厚い銀白色の鱗屑が付着する紅斑を特徴とします。
頭部、肘、膝、腰などに好発します。
乾癬患者が掻破に伴い皮膚所見のないところに皮疹が新生するKöbner 現象があり、
そう痒からの掻破で皮疹を悪化させるため、痒みに対しての治療も重要です。
自己免疫性水疱症の一つです。痒みを伴うことが多く、高齢者に緊満性水疱が散在し、まれに粘膜病変もみられます。
ヒゼンダニによる角層寄生で痒みの強い疾患の一つです。
虫による皮膚症状は以下の3つに大別されます。
生のシイタケの摂取後、数時間~数日以内に激しいそう痒とともに浮腫性の線状紅斑を生じます。
慢性腎不全では約30% の患者に痒みを認め、血液透析中の患者のそう痒合併率は80%とさらに増加します。
黄疸患者の約25%には痒みが生じます。
甲状腺機能亢進症の痒みの合併頻度は約10%程度です。
その他では、糖尿病があげられます。また、妊娠後期には皮膚所見を有しない妊娠性皮膚そう痒症がみられ、エストロゲンの関与が考えられています。
出産後軽快しますが、妊娠するごとに再燃します。
真性赤血球増多症は約50%に認め、温度に関係なく、水と接触した後に自覚することが多いです。
Hodgkin 病の約30%に痒みがみられます。
そのほか悪性腫瘍患者にそう痒を自覚することがあります。
原因としては、前立腺肥大症、尿道狭窄やトリコモナス症、心因性など様々です。
男性に多くみられます。
上背部のTh2~Th6 レベルに痒みをが出現します。
脊髄神経後根枝が僧帽筋に圧迫されて生じるとされ、灼熱感、チクチク感などの異常感覚を生じます。
痒みを引き起こす食物:ヒスタミンやコリンなどの直接的起痒物質を多量に含むサバ、マグロ、サケ、タラ、イカ、タコ、エビ、アサリ、ブタ、サラミ、タケノコ、マツタケ、イモ、ホウレンソウ、ナス、トマト、ソバ、ワイン、ビールなど。
痒みを引き起こす食物:間接的に痒身を引き起こす物質であるヒスタミン遊離物質を多量に含む魚介類大半、卵白、トマト、イチゴ、チョコレートなど。
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