幼児期の湿疹
1歳を過ぎて自分で動き回るようになると、行動範囲が広がり、肌がさまざまな刺激にさらされるようになります。
その結果、乳児期とは異なるタイプの湿疹や皮膚トラブルが見られることがあります。
また、この時期は皮脂の分泌が少なく、肌が乾燥しやすいため、外からの刺激が肌の奥まで届きやすくなります。
幼児湿疹の原因
- ホルモンの影響による皮脂分泌の増加
- 外的刺激(衣類・汗・摩擦など)
- アレルギー反応(アトピー性皮膚炎・アレルギー性接触皮膚炎)
- 汗や熱による皮膚トラブル
- 繰り返しの掻き壊し
よくある幼児湿疹の種類
アトピー性皮膚炎
皮膚のバリア機能の低下とアレルギー体質が関係する、慢性的なかゆみを伴う湿疹です。
幼児期には以下のような特徴が見られます。
- 肌全体が乾燥し、ザラザラとした鮫肌状(アトピックドライスキン)になります。触れるとカサつきや粗さを感じます
- 肘や膝の裏、手首、足首などの関節の内側に湿疹ができやすいのが特徴です
- 掻きこわしが続くと皮膚が厚く硬くなる「苔癬化(たいせんか)」や色素沈着が起こることもあり、湿疹が慢性化する原因となります
- 湿疹のある部位を爪で軽くこすると皮膚が白くなる「白色皮膚描記症(white demlographism)」が見られることがあり、これは診断の参考になる所見です
- 爪がツヤツヤと光っている場合(pearly nail、polish nail)は、無意識に頻繁に掻いているサインです。爪の根元に黒ずみ(色素沈着)が見られることもあります
接触皮膚炎(かぶれ)
- 刺激性接触皮膚炎:誰にでも起こり得る皮膚炎です。石けん、汗、よだれなどの繰り返しの刺激が原因で、接触した部位のみに生じます
- アレルギー性接触皮膚炎:一度目の接触では反応せず、特定の物質に感作されたあと再度接触したときに湿疹が起こるタイプです。症状が接触部位を超えて広がることもあります
汗疹(あせも)
- 汗をかきやすい季節や環境で、首、額、わき、肘や膝の裏などに小さな赤いポツポツが出ることがあります。
- 皮膚を清潔に保ち、通気性のよい服を着ることが予防の基本です
幼児湿疹の治療とケア
基本のスキンケア
- しっかりと保湿し、乾燥から肌を守る
- 低刺激のスキンケア用品を選び、汗や汚れはこまめに洗い流す
- 掻きむしり防止のため、爪を短く整える・ミトンを使用することも有効です
必要に応じて使うお薬
- ステロイド外用薬
炎症やかゆみを抑える治療の基本。症状の強さに合わせて適切な強さの薬を短期間使用します
- 非ステロイド系外用薬(タクロリムスなど)
ステロイドを使いにくい部位(顔など)に処方されることもあります
- 抗真菌薬外用薬
湿疹にカビ(マラセチアなど)が関与していると疑われる場合に使用されます
- 抗菌薬外用薬
掻き壊しによるとびひ(二次感染)がある場合に使用されます
- 抗ヒスタミン薬
掻き壊しによるとびひ(二次感染)がある場合に使用されます
- アレルギー治療薬
アレルギーが関与していると考えられる場合に使用されることがあります
よくあるご質問(FAQ)
- 幼児になってからも湿疹が治りません。成長すれば自然に良くなりますか?
- 幼児期は皮脂が少なく乾燥しやすいため、汗や摩擦などの刺激で湿疹が続くことがあります。
スキンケアや環境の見直しで改善することも多いですが、乳児期とは違い、行動や外的刺激の影響を強く受けやすいのが特徴です。
湿疹が長引いたり、かゆみが強い場合は、アトピー性皮膚炎やかぶれの可能性もあるため、早めに皮膚科での診察をおすすめします。
- よく動き回るせいで汗をかき、すぐあせもになります。どう対処すればいいですか?
- あせもは、汗がたまって蒸れることで起こる湿疹です。
通気性の良い服を選び、汗をかいたら早めに拭く・着替える、清潔を保つことが予防になります。ひどくなる前にしっかり保湿し、必要に応じて薬を使いましょう。